標準治療にペムブロリズマブの周術期追加投与で新規頭頸部がんの転帰が改善

術後補助療法として周術期にペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)を投与すると、未治療の局所進行頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者の治療効果と生存率が改善することが、4月25日から30日に開催された米国がん学会(AACR)2025年年次総会で発表された第3相臨床試験の結果から明らかになった。
 
通常、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)と新規に診断された患者の多くは手術を受けた後、化学放射線療法または放射線治療を受ける。このように説明するのは、研究発表者のRanvindra Uppaluri医学博士(ブリガム・アンド・ウィメンズ病院耳鼻咽喉科寄付講座教授、ダナ・ファーバー・ブリガムがんセンター頭頸部外科腫瘍学ディレクター、ハーバード大学医学大学院耳鼻咽喉科/頭頸部外科准教授)である。
 
「この標準治療は20年以上も続いていますが、残念ながら多くの患者の転帰は依然として満足のいくものではありません」とUppaluri博士述べた。
 
Uppaluri博士はさらに、免疫療法は腫瘍が最初に診断された時だけでなく、初期治療後に残存病変が最小になった場合でも効果を発揮する可能性があると続けた。「腫瘍量と抗原量が多い手術前、免疫療法は免疫反応を増強させ、腫瘍を死滅させる作用を発揮し始めます。標準治療後、残存している可能性のあるがん細胞を免疫療法で治療することができます」と同博士は述べた。「ワシントン大学医学部のDouglas Adkins医師と共同で、私たちは以前、第2相試験において、ペムブロリズマブの周術期投与は安全であり、手術を受けた頭頸部がん患者において興味深い臨床反応をもたらすことを示しました」。
 
Uppaluri博士らは、第3相KEYNOTE-689試験において、現在の標準治療に免疫療法を追加することで再発を予防できるかどうかを検証した。このランダム化実薬対照非盲検試験では、ステージ3~4の頭頸部扁平上皮がん(喉頭、下咽頭、口腔を含む)患者714人が登録された。全患者が手術を受けた後、病理学的に決定された術後補助療法を受けた。そのうち363人が、ペムブロリズマブを周術期に投与される群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は無イベント生存率(再発または死亡)、副次評価項目は腫瘍の90%以上の縮小と定義される主要病理学的奏効率(mPR)と全生存率であった。
 
患者の半数が38.3カ月以上の追跡調査を受けた結果、ペムブロリズマブ投与群では再発率が27%以上低下した。ペムブロリズマブ投与群は非投与群と比較してmPR(m-PR)を示す可能性が高く、PD-L1発現腫瘍を有する患者では、生存率とmPRの両方のベネフィットがより多く認められた。PD-L1発現率が高い腫瘍(複合陽性スコア10以上と定義)では、手術前のmPR率が13.7%上昇し、再発率が34%低下した。
 
グレード3以上の治療関連有害事象は、本試験の両群でほぼ同程度の割合で発現し、ペムブロリズマブ群では4例、標準治療群では1例の死亡例が認められた。グレード3以上の免疫介在性有害事象は、ペムブロリズマブ群の参加者の10%に発現し、その中にはグレード5の肺炎が1例含まれていた。
 
「世界中から何百人もの患者がこの重要な試験に参加しました。彼らの貢献を活かして現在の標準治療を変えることが、私たちの大きな目標です」とUppaluri博士は述べた。「この新たな情報は、現在の標準治療にペムブロリズマブの周術期補助療法を含めるという変更の根拠となります。この困難な疾患の患者は、20年以上ぶりに新たな治療法を手にすることになります」。
 
今後、Uppaluri博士はこの戦略の実施方法を改善したいと考えている。「このアプローチが安全であることがわかったので、手術や補助療法をどのように変更すれば、治療の副作用によって患者が直面する問題を軽減できるかについて検討を始めることができます」。
 
本研究の限界は、試験の良好な結果に対する術前補助療法と術後補助療法の相対的な寄与に関する分析が不足していることである。免疫療法の両段階が抗腫瘍免疫応答に影響を与えた可能性はあるものの、観察された臨床転帰に対する各段階の寄与は明らかにされていない。
 
この研究はMerck & Co., Inc.社の資金提供を受けた。Uppaluri博士は、今回の研究についてMerck & Co., Inc.社の子会社であるMerck Sharp & Dohme LLC社からの研究資金に加え、第一三共からの研究資金、およびMerck & Co., Inc.社、第一三共、およびRegeneron社からのコンサルティング料も受けたと報告している。

  • 監修 山﨑知子(頭頸部・甲状腺・歯科/埼玉医科大学国際医療センター 頭頸部 腫瘍科)
  • 記事担当者 仲里芳子
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  • 原文掲載日 2025/04/27

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