【ASCO2025】頭頸部がん術後化学放射線療法にニボルマブ追加で再発を抑制

ASCOの見解(引用)

「切除手術を受けた高リスク頭頸部扁平上皮がんにおいて、化学放射線療法にニボルマブを補助的に併用することで、腫瘍のPD-L1状態に関係なく無病生存期間が改善しました。 これは頭頸部扁平上皮がんにおいて化学放射線療法へのニボルマブ追加の有用性を初めて示した試験です」と、Glenn J. Hanna医師(ダナファーバーがん研究所がん治療イノベーションセンター長、ASCO頭頸部がんエキスパート)は言う。 「周術期、つまりネオアジュバント(術前)療法とアジュバント(術後)療法としてのペムブロリズマブ投与が最近、同様の患者集団において転帰を改善したことから、これらの患者に対して免疫療法をどの順序で投与するのが最適であるかが注目されるでしょう」。

試験要旨

焦点手術後の再発リスクが高い局所進行頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)
対象者切除手術を受けた局所進行HNSCC患者680人
主な結果術後化学放射線療法にニボルマブを追加することで、局所進行HNSCC患者の再発の可能性を減少させることができる。
意義・ 世界で頭頸部がんは6番目に多く診断されるがんである。ほとんどの頭頸部扁平上皮がん患者は局所進行がんと診断される。

・ 著者らによると、標準治療(高リスクがんに対して手術後に化学放射線療法を行う)を行った場合、3年後にがんが再発していない患者は50%から55%に過ぎない。

・ 標準治療が改善されてから20年以上経過しており、局所進行HNSCC患者への満足な治療法は、まったくと言っていいほどない。

国際共同第3相NIVOPOSTOP臨床試験の結果、局所進行頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者において、手術後の化学放射線療法にニボルマブ(販売名:オプジーボ)を追加することで再発の可能性が減少することが明らかになった。これは、これらの患者に対する標準治療が20年以上ぶりに改善されたことを示す最新研究の1つである。この研究は、5月30日から6月3日までシカゴで開催される2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。

試験について

「局所進行頭頸部がん患者の転帰は一般的に依然として不良で、標準治療で治療した場合、3年後にがんが再発していない患者は50%から55%に過ぎません。有効性、忍容性ともに今より高い治療法が必要なのは明らかです。私たちは、この標準治療を改善するために20年以上努力してきました」と、研究代表者のJean Bourhis医学博士(スイス、ローザンヌ、ローザンヌ大学病院)は述べた。

局所進行HNSCC患者の約半数は手術でがんを切除することになる。手術後、がん再発リスクの高い患者は化学放射線療法を受けるが、この治療を受けた患者の最大50%でがんが再発する。

NIVOPOSTOP試験では、再発リスクの高い局所進行HNSCC患者を対象に、手術後の化学放射線療法にニボルマブを追加することで、がんの再発を遅らせることができるかどうかを検討した。本研究では、登録患者680人のうち666人から事前に規定された時期までに得られたデータが調査された。試験参加患者は75歳未満で、局所進行(リンパ節転移を伴う局所がん)頭頸部扁平上皮がんであった。試験参加要件として、患者は手術後の再発リスクが高いと判定されている必要があった。
 
手術後、患者は2つの治療群のいずれかに無作為に割り付けられた:

  • A群(334人)には、化学放射線療法(合計66グレイの放射線+全身化学療法薬シスプラチン)が3週間ごとに3サイクル行われた。グレイとは腫瘍に対する放射線の吸収線量の単位である。 
  • B群(332人)では、ニボルマブの初回投与後、ニボルマブと化学放射線療法を3週間ごとに3サイクル併用し、その後ニボルマブ単独療法を4週間ごとに6サイクル行った。

主な知見

追跡期間中央値30.3カ月の時点で、666人中252人が再発または死亡していた。 研究で以下のことが判明した:

ニボルマブと化学放射線療法を併用した患者では、無病生存率が24%高かった。
ニボルマブを投与された患者において、治療3年後にがん再発の徴候がなかった患者の割合は63.1%であったのに対し、化学放射線療法のみを受けた患者では52.5%であった。

ニボルマブ投与で重篤な副作用がより多く生じた。治療後100日間で、ニボルマブ+化学放射線療法併用群の13.1%がグレード4の有害事象を経験したのに対し、化学放射線療法単独群では5.6%であった。両群で最も多かったグレード4の有害事象は好中球減少とリンパ球減少であった。

次のステップ

研究者らは、事前に規定した死亡数に達した時点、おそらく2026年か2027年に、最新の全生存率データを共有する予定である。
本研究はBristol Myers Squibb社とGORTEC社から資金提供を受けた。

  • 監修 小宮武文(腫瘍内科/Penn State College of Medicine)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2025/06/02

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