シスプラチン/フルオロウラシルにパニツムマブを追加することで再発・転移性頭頸部癌患者の無増悪生存期間が延長

キャンサーコンサルタンツ

再発または転移性の頭頸部癌患者に対する初回治療として、シスプラチンとフルオロウラシル併用に、パニツムマブ(ベクティビックス)を追加することで無増悪生存期間が改善されたとの臨床試験結果がLancet Oncology誌に掲載された。

頭頸部癌は、口腔、鼻腔および咽喉腔の組織内またはその周辺に発症する。頭頸部癌のリスク因子として、喫煙、アルコール摂取および高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)感染などが挙げられる。頭頸部癌が他部位に転移した、または初回の治療後に再発した患者には治療の選択肢が限られているため、研究者達は新たな、またより効果が高い治療方法を探索している。

標的治療は、癌細胞の増殖や生存に関わる特定の経路を妨げる抗癌剤を用いる治療である。パニツムマブは、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)として知られるタンパク質を標的とすることで癌細胞の成長および生存を阻害する。これまでの研究により、パニツムマブが再発または転移性の頭頸部癌患者の臨床転帰を改善する可能性が示されてきた。

26カ国に及ぶ126施設において、非盲検、無作為化第3相臨床試験が実施され、転移または再発性頭頸部癌に対する初回治療としてシスプラチンとフルオロウラシル(5-FU)にパニツムマブを併用した際の有効性および安全性が評価された。本臨床試験には、遠隔転移または局所再発頭頸部癌で、外科手術または放射線療法による治療が不可能と考えられた657人が登録された。患者は、シスプラチンおよび5-FUにパニツムマブを併用する群としない群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存期間であった。予め規定された回顧的解析では、転帰を予測できる可能性のある因子として腫瘍のHPV感染の有無をp16-INK4A(p16)免疫組織化学的測定法を用いて評価した。

本試験の結果、全生存期間の中央値は対照群9.0カ月に対しパニツムマブ投与群で11.1カ月であったことが示された。無増悪生存期間の中央値はパニツムマブ投与群で5.8カ月、対照群で4.6カ月であった。患者の67%からp16発現の有無が得られ、そのうち22%(99人)はp16陽性であった。腫瘍のp16が陰性であった患者においては、全生存期間の中央値は、パニツムマブ投与群(11.7カ月)で対照群(8.6カ月)と比較して有意に延長された。腫瘍のp16が陽性であった患者においては、全生存期間はパニツムマブ投与群(11.0カ月)と対照群(12.6カ月)との間で差は認められなかった。また、対照群ではp16陽性患者とp16陰性患者と比較して全生存期間の有意な延長は認められなかった。

パニツムマブ投与群で多く発現したGrade3または4の有害事象は、皮膚または眼に対する毒性、低マグネシウム血症、低カリウム血症、下痢、および脱水症であった。治療に関連した死亡例は、パニツムマブ投与群で14人(4%)、対照群で8人(2%)であり、パニツムマブ投与群の死亡例5人(2%)はベクティビックス投与との関連性が認められた。

本試験の結果、シスプラチンおよび5-FUにパニツムマブを併用することで、再発または転移性頭頸部癌患者の無増悪生存期間が改善された。また、その毒性は許容できる程度であると結論された。試験を実施した研究者らは、パニツムマブおよび化学療法で治療する患者においてp16発現の有無が予後予測マーカーとなり得ると推測している。

参考文献:
Vermorken JB, Stohlmacher-Williams J, Davidenko I, et al. Cisplatin and fluorouracil with or without panitumumab in patients with recurrent or metastatic squamous-cell carcinoma of the head and neck (SPECTRUM): an open-label phase 3 randomised trial. The Lancet Oncology. 2013; 14(8): 697-710.


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翻訳担当者 石岡優子

監修 辻村信一(獣医学/農学博士、メディカルライター/株式会社メディア総合研究所)

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