タルセバ®とアバスチン®の併用は頭頸部扁平上皮癌に安全で有効

キャンサーコンサルタンツ
2009年3月

シカゴ大学と米国国立癌研究所は、再発性または転移性の頭頸部扁平上皮癌患者の一部に対してタルセバ(エルロニチブ)とアバスチン(ベバシズマブ)の併用は忍容性が高く、効果が持続したとする臨床試験結果を発表した。この試験の詳細は2009年3月発行のLancet Oncology誌に掲載された。[1]

タルセバは上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤である。EGFRとは細胞の表面にある小さなタンパク質である。EGFRは、血液内で循環している小さな成長因子タンパク質にのみ結合する。EGFRと成長因子との結合作用は厳格な管理下で細胞内の生物学的プロセスを刺激し、細胞の成長を促進する。しかし、多くの癌細胞では、EGFRが過剰発現しているか、通常細胞の成長を刺激するEGFRの生物学的プロセスが絶えず活性化しており、制御されない、過剰な癌細胞の増殖につながっている。タルセバは 非小肺細胞癌の治療薬として米国FDAに承認されており、肝細胞癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎細胞癌など様々な腫瘍に高い効果がある。

アバスチンは血管内皮増殖因子(VEGF)に対するヒト化モノクローナル抗体である。アバスチンは、5-フルオロウラシルベース治療と併用で進行性結腸直腸癌の一次治療としてFDAに承認されており、この疾患の治療でイリノテカンベースの化学療法と併用した場合、生存率の改善が見られた。またアバスチンは最近、乳癌の治療としても承認された。アバスチンは様々な化学療法や標的薬剤との併用を評価されており、様々なタイプの癌で注目に値する結果を出している。

これまでの頭頸部癌に対する標的薬剤治療の試験により、EGFRの外部に結合するモノクローナル抗体であるアービタックス(セツキシマブ)の有効性が示されている。

最新の試験は多施設第1/2相試験で、第1相試験部分では10人の患者、第2相試験部分では48人の患者が参加した。全員が再発性または転移性の頭頸部扁平上皮癌患者であり、タルセバとアバスチンを服用した。最も一般的な副作用は発疹、下痢、出血であった。第2相試験部分の48人の患者のうち7人で奏効し、そのうち4人が完全奏効した。生存率の中央値は7.1カ月で無増悪生存期間の中央値は4カ月であった。奏効性はEGRFとVEGFの腫瘍発現に関係があった。

参考文献:
[1] Cohen EEW, Davis DW, Karrison TG, et al. Erlotinib and bevacizumab in patients with recurrent or metastatic squamous-cell carcinoma of the head and neck: a phase I/II study. Lancet Oncology. 2009;10:247-257.


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翻訳担当者 平川 麻衣子

監修 林 正樹 (血液・腫瘍科)

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