PD-L2発現が抗PD-1免疫療法の奏効を予測できる可能性

ヒト腫瘍のPD-L2タンパク質発現は、PD-L1発現の有無に関わらず、頭頸部扁平上皮がん患者の抗PD-1免疫療法剤ペムブロリズマブ(キートルーダ)への臨床反応に関連しているという研究が、米国がん学会の機関誌Clinical Cancer Research誌で発表された。

「PD-1にはPD-L1およびPD-L2という2つの結合物質があることはよく知られていますが、これまでに発表された研究の大半は、PD-L1発現のみの分布および予測効果が研究対象でした」と、Merck Research Laboratories(カリフォルニア州パロアルト)解剖病理学上級主任研究員Jennifer H. Yearley氏(医学博士・獣医学)は述べた。

「私たちが開発した分析方法では、特異度と感度の高いPD-L2を検出することによってヒト腫瘍内のPD-L2発現率を評価し、頭頸部扁平上皮がん患者におけるPD-L2発現とペムブロリズマブへの臨床反応との関連性を査定します」。

まず、Yearley氏らは、この新たな免疫組織化学分析方法を用いてがん種7種(腎細胞がん、膀胱がん、メラノーマ、非小細胞肺がん、トリプルネガティブ乳がん、胃がん、頭頸部扁平上皮がん)にわたり400を超える腫瘍の保存検体を解析した。

「PD-L2発現が、今回調べたがん種すべてにおいていかに多いかがわかり、大変驚いています」とYearley氏は述べた。

Yearley氏らはまた、PD-L2発現ががん種によって著しく異なることを発見した。胃がんおよびトリプルネガティブ乳がんではおおむね中程度から高度の発現が認められた一方で、腎細胞がんでの発現は圧倒的に低度であった。

さらに、頭頸部扁平上皮がん検体の半数以上にPD-L2の腫瘍細胞発現がみられた一方で、腫瘍細胞発現は腎細胞がんではまったくみられず、メラノーマ検体でもわずかしかみられなかった。

次に、Yearley氏らは、KEYNOTE-012試験でペムブロリズマブ治療群に割りつけられた2つの複合コホートで、再発性または転移性頭頸部扁平上皮がん患者172人からの腫瘍検体を検証した。

Yearley氏らは、臨床反応がPD-L2発現に関連することを発見し、そのことからPD-L1およびPD-L2の両方を標的とする治療が患者奏効を促進する可能性が示唆される。

「本試験の2つのKEYNOTE-012コホートでの全奏効率(ORR)は、PD-L1およびPD-L2の両方が陽性を示した腫瘍を有する患者では27.5%であり、PD-L1のみ陽性を示した腫瘍を有する患者のORRが11.4%であるのと比べて2倍以上でした」とYearley氏は述べた。

PD-L2陽性はより長い全生存期間(OS)と関連があることも判明し、OSの中央値は、PD-L2陽性患者とPD-L2陰性患者ではそれぞれ303日、109日であった。

「PD-L1が、さまざまながん種で多様なレベルで予測が可能なマーカーであることはすでにわかっています」とYearley氏は述べた。

「PD-L1陽性で奏効しない人もいれば、PD-L1陰性で奏効する人もいます」。

全体的に、本試験はPD-L2発現が抗PD-1療法に対する臨床反応を予測するうえでPD-L1陽性を超えた追加情報を提供する可能性があることを示唆していると、Yearley氏は述べた。

さらに進行中の研究に関しては、PD-L1や他の免疫関連分析対象と共にみられるPD-L2の発現は、T細胞炎症性腫瘍微小環境を反映する遺伝子発現プロファイルに含まれると、Yearley氏は述べた。

本プロファイルは抗PD-1療法に対する反応と関連があることがわかっており、現在、ペムブロリズマブ臨床試験で診断への利用可能性が検証されていると、Yearley氏は述べた。

本研究の限界は、今回の新規分析方法を用いて入手したデータが他の標準的な検出・スコア化法と比較されていないこと、および、本試験は予備的試験であったため、臨床反応陽性に関連するPD-L2発現レベルのカットオフが設定されていないことである。

本試験はメルク社の助成を受けており、Yearley氏はメルク社の社員である。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 石井一夫(バイオ統計学/久留米大学バイオ統計センター)

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