放射線照射後の頭頸部がん再発は腫瘍のPD-L1高発現と関連
ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性の頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)の放射線療法後における再発は、腫瘍のPD-L1(タンパク質)発現度が高いことに関係するとの研究結果が、米国がん学会(AACR)学会誌Clinical Cancer Research誌に掲載された。
「放射線照射は、HPV陰性、頭頸部扁平上皮がんの根治治療の中心となります」、とヒューストンにあるテキサス大学MDアンダーソンがんセンター放射線腫瘍学部助教であるHeath D. Skinner医学博士は述べた。「残念ながら、患者の30~50%で局所再発が生じ、最終的には放射線療法後、この疾患により死亡します」。
「本研究では、腫瘍の放射線抵抗性に関し、治療上標的となるバイオマーカーの特定・検証に焦点を置きました」、とSkinner博士は続けた。「HPV陰性、頭頸部扁平上皮がん患者に関し、PD-L1が放射線照射後の転帰不良に関するバイオマーカーであると特定・検証したことに興奮しました。PD-1/PD-L1伝達経路を標的とする免疫治療薬は複数ありますが、われわれのデータは、放射線照射とPD-1/PD-L1阻害剤を併用することによりHPV陰性頭頸部扁平上皮がん患者の転帰を改善できる可能性を示唆しているためです」。
特定のHPV種への感染が原因となっている頭頸部扁平上皮がんもあるが、多くはHPV陰性である、とSkinner博士は説明した。HPV陰性の頭頸部扁平上皮がん患者では治療後の転帰が特に不良である。このため、研究チームはこの患者群の生存率を改善する可能性があり、標的にできると考えられるバイオマーカーの特定に重点を置いた、とSkinner博士は述べた。
まず研究チームは、放射線抵抗性にしたHPV陰性頭頸部扁平上皮がん細胞株と親細胞株を比較して発現量が高くなったタンパク質の特定をした。発現量が最も高くなったタンパク質はPD-L1、AXL、およびPI3Kシグナル伝達経路で機能するタンパク質であった。
さらに、別のHPV陰性頭頸部扁平上皮がん細胞株を解析したところ、 PD-L1の発現量とPI3K / Akt シグナル伝達との間に相関が認められた。また、2種類の方法でAXLあるいはPI3Kいずれかを阻害すると PD-L1発現量が低下した。
in vitroでPD-L1発現量とPI3K / Akt シグナル伝達との間に相関が認められたという観察結果は、局所進行した同疾患患者からなる2つの患者集団(68人と97人)およびがんゲノム・アトラスのHPV陰性HPV陰性頭頸部扁平上皮がん患者からなる患者集団で確認された。
3つの患者集団を対象とし、3種類のPD-L1分析法を用いて単変量解析を行った。その結果、3年間の局所再発率は、PD-L1発現量が高い腫瘍ではそれぞれ、60%、70% 、および50%であった。また、PD-L1発現量が低い腫瘍ではそれぞれ20%、25%、および20%であった。多変量解析においても、PD-L1発現量と局所再発率との間には依然として統計上有意な相関が認められた。
「PD-L1発現量が高い患者と低い患者との間で転帰が大きく異なり、驚きました」、とSkinner博士は述べた。「しかし、複数の患者集団とさまざまな PD-L1分析法を用いても結果の一貫性は非常に高かったため、この研究が臨床的に有意義であると確信しています」。
「AXL、 PI3K、およびPD-L1との間の臨床データが本質的に相関することは本研究の限界です。このため、現在、AXLと PI3Kを修飾および標的化(もしくはいずれか)することでPD-L1発現量を変化させ、最終的に放射線照射の効果が高める方法について研究しています」とSkinner博士は付け加えた。
本研究は米国国立がん研究所およびCancer Prevention & Research Institute of Texasから資金援助を受けた。Skinner博士は利益相反行為がないことを宣言している。
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