頭頸部がんで術前免疫化学療法への反応により手術を縮小可能か
手術は臓器機能障害や顔貌変形を引き起こす可能性も
局所進行頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)の患者のうち、術前免疫化学療法(ICT)によって腫瘍の縮小が認められ、その後、手術範囲を縮小した患者では、無病生存率と臓器温存率が高かったことが、米国癌学会(AACR)の学術誌Clinical Cancer Research誌に掲載された研究で示された。
頭頸部がんとは、鼻腔、副鼻腔、口唇、口腔、唾液腺、咽頭、喉頭などに発生する悪性腫瘍である。なかでも最も多いのは、口腔、咽頭、喉頭の扁平上皮細胞から発生するがんである。HNSCC患者の60%以上は局所進行期で診断され、再発や転移のリスクが高い。特にヒトパピローマウイルス(HPV)陰性のHNSCCでは、治療成績が不良である。
「従来、局所進行HPV陰性HNSCCの患者には、手術を行わない根治的化学放射線療法、または根治手術後に放射線療法を行う治療が選択されてきました」と、中国・華中科技大学同済医学院附属協和医院がんセンター長であり、本研究の統括著者の一人でもあるKunyu Yang医師は述べた。
Yang氏はさらに、「局所進行HNSCCに対する根治手術、つまり腫瘍とその周囲組織を広範囲に切除する手術では、しばしば臓器機能の障害や顔貌の変形が生じます。化学放射線療法では喉頭や咽頭などの臓器を温存できますが、長期追跡研究では、嚥下障害、経管栄養への依存、失声といった重篤な有害事象を引き起こすことが示されています」と述べる。「そのため、こうした治療では依然として再発率が高く、生活の質も低下することから、より優れた治療選択肢に対する大きなアンメットニーズが残されています」。
これまでの研究では、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)の治療に免疫療法を追加することで、全生存期間が改善することが示されている。また、Yang氏らの研究グループが以前Clinical Cancer Research誌に発表した研究では、手術および放射線療法の前に免疫化学療法(ICT)を実施することで、局所進行HNSCC患者の治療成績が有意に改善することが示された。
「患者が術前ICTに非常によく反応し、腫瘍が大きく縮小したことから、次に私たちは、この治療戦略によって疾患をコントロールし、良好な機能を維持しながら、手術範囲を縮小できるのではないかと考えました」とYang氏は述べた。
これを検証するため、Yang氏らの研究チームは、切除可能な局所進行HPV陰性HNSCC患者52人に対して、ICTを3サイクル実施した。術前治療中は画像検査によって腫瘍の反応を評価した。ICT後に腫瘍が50%以上縮小した患者には、残存腫瘍を切除しつつ周囲の組織や臓器への影響をできる限り抑える縮小手術を行い、腫瘍縮小率が50%未満だった患者には標準的な範囲の手術を行った。
47人が3サイクルの術前治療を完了し、その後手術を受けた。一方、5人は研究プロトコルを継続しなかった。47人のうち42人(90%)では腫瘍が50%以上縮小し、縮小手術が行われた。残る5人(10%)ではICT後の腫瘍縮小率が50%未満で、標準的な範囲の手術が行われた。
2年後の時点で、縮小手術を受けた患者の90%は、再発、転移、死亡のいずれも認めなかった。さらに、喉頭がんまたは下咽頭がんで縮小手術を受けた39人全員(100%)で、喉頭機能が温存されていた。
一方、腫瘍縮小率が50%未満で標準的な範囲の手術を受けた患者では、2年無病生存率は20%にとどまった。また、喉頭または下咽頭の手術を受けた3人のうち1人では、喉頭機能が完全に失われた。
この研究ではさらに、PD-L1の発現量が、免疫化学療法(ICT)への反応を予測するバイオマーカーとなる可能性も示された。PD-L1の発現量を示す指標であるPD-L1 Combined Positive Score(CPS)が高いほど、術前ICT後の病理学的完全奏効(pCR)率が高いという正の相関が認められた。PD-L1 CPSが高値(20超)だった患者では65%がpCRを達成したのに対し、CPSが1~19の患者では28%、1未満の患者では14%だった。
「今回の結果は有望であり、さらなる研究を進める十分な根拠になると考えています」とYang氏は述べた。「現時点では、現在の標準治療を変更するにはまだ十分な結果ではありません。しかし、手術前にICTを行うことで顕著な腫瘍縮小が得られ、縮小手術を行った場合でも良好な治療成績が得られることを示しました。これは、術前ICTに対する腫瘍の反応に応じて、患者ごとに手術を個別化できる可能性を示しています。また今回の結果は、治療初期に抵抗性を示すことが強力な予後予測因子となる可能性を示すとともに、治療に反応しないがんに対する代替治療戦略が早急に必要であることも示しています」。
本研究の限界としては、単群試験であること、また対象患者数が比較的少なく、その多くを喉頭がんおよび下咽頭がんの患者が占めていたことが挙げられる。
本研究は、中国国家自然科学基金および湖北省重点研究開発計画の助成を受けて実施された。Yang氏は、利益相反はないことを報告している。
- 記事担当 平沢沙枝
- 監修 小宮武文(腫瘍内科/Penn State College of Medicine)
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- 原文掲載日 2026/09/10
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