【AACR26】口腔前がん病変にニボルマブの直接投与は有効か

【AACR26】口腔前がん病変にニボルマブの直接投与は有効か

治療により生活の質(QOL)が維持される

口腔前がん病変にニボルマブ(販売名:オプジーボ)を直接注射することで、病変の大きさが縮小し、一部の患者では手術を回避できたことが、4月17~22日に開催された2026年米国がん学会(AACR)年次総会で発表された第1相臨床試験の結果により明らかになった。
 
口腔前がん病変は一般人口の約5%に認められ、そのうち口腔がんへ進行するリスクは、異形成の程度(すなわち、病変の細胞がどれほど異常であるか)やその他の要因によって1%~36%の範囲に及ぶと、発表者であるMoran Amit医学博士(テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの外科医・助教)は説明した。進行リスクを予測できる信頼性の高いバイオマーカーが存在しないため、多くの患者は通常、病変の外科的切除を受けるが、この処置は高い罹患率(治療に伴う身体的負担や合併症の頻度)を伴うと同氏は述べた。
 
「口は、話す、食べる、飲む、呼吸するなど、さまざまな機能を有します。口の中に痛みを感じた時、それがどれほど日常生活に支障をきたしたかを思い出してみてください。そして、病変が再発するたびに、口の中の多くの場所で何度も手術を受けなければならない状況を想像してみてください。」とAmit氏は述べ、患者の約60%が複数の病変を抱えており、手術後の再発リスクは最大40%に達する可能性があることも指摘した。
 
「患者が手術を受けるたびに、口腔内の容積が失われていきます。特に影響を受けやすいのは舌です。舌が一定量以上失われると、発音ができなくなり、効果的に飲み込むこともできなくなります」とAmit氏は付け加えた。「前がん病変のために、患者は話す能力や食べる能力を失う可能性があります。今回の研究の目的は、このような生活の質を大きく損なう手術を患者が受けずに済む方法を見つけることでした」。
 
これまでの研究では、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブによる治療により、口腔前がん病変の大きさや進行リスクを低減する可能性が示されているが、この治療は静脈内投与による全身投与であり重度の毒性を伴うとAmit氏は述べている。
 
「効果は認められるものの、全身投与のニボルマブは、まだがんを発症していない患者にとっては容認できないような毒性を引き起こす可能性があります」と同氏は指摘した。
 
そこでAmit氏らは、ニボルマブを静脈内投与量の2~4%という低用量で口腔病変に直接注射することで、静脈内投与による全身性の毒性を引き起こすことなく、病変を効果的に治療できるのではないかと考えた。
 
この仮説を検証するため、研究チームは病変内ニボルマブ投与の安全性と有効性を評価する第1相臨床試験を実施した。
 
この試験には、組織学的に確認された未治療の口腔前がん病変を少なくとも1つ有し、その大きさ、部位、形態、異形成の程度、あるいは患者の年齢や既往歴により口腔がんへ進行するリスクが高いとされた29人の患者が登録された。病変の半数以上は舌に認められた。15人の患者は高度異形成(中等度または高度)の病変を有しており、残りの14人は低度異形成(軽度)であった。
 
患者は、口腔内病変の1か所にニボルマブ10 mgまたは20 mgを直接注射され、3週間ごとに計4サイクル投与された。本試験のプロトコルでは、病変内へのニボルマブ投与による効果が全身的なものか、注射部位に限定されるものかを評価するため、1患者あたり1つの病変のみを治療対象とすることが定められていた。患者に複数の病変がある場合は、最も大きな病変を治療対象として選択した。
 
初回注射後の追跡期間中央値14.5カ月時点で、29人の患者のうち25人(85%)が、病変サイズの縮小と定義される臨床的奏効を示した。病変面積は平均60%減少しており、19人の患者では50%以上の減少が認められた。治療開始時に高悪性度および低悪性度であった病変のいずれにおいても、臨床的奏効が認められた。12人の患者(41%)では、治療対象となった病変の組織学的悪性度が低下し、6人では病理学的完全奏効が認められた。これは、追跡調査時点で治療対象となった病変に異形成が認められなかったことを意味する。病理学的完全奏効を示した6人のうち、4人は治療前に中等度の異形成を、2人は軽度の異形成を有していた。
 
治療から12カ月後、治療対象となった病変の82.13%は引き続きがんが認められなかった。治療対象となった病変ががんへと進行した6人の患者については、進行が早期に発見され、病変は外科的に切除された。病変が進行しなかった患者のうち、追跡期間中に治療対象となった病変の外科的切除を必要とした、あるいは希望した患者はいなかった。
 
ニボルマブの血清中濃度は、全身投与で通常観察される値に比べて一貫して10分の1の低さであった。病変内投与では、用量制限毒性は認められなかった。特に頻度の高かった有害事象は、疲労、下痢、および発疹であった。注射部位の軽度の反応は注射の40%で認められたが、処置を要することなく48時間以内に消失した。有害事象のほとんどはグレード1または2であったが、グレード3の下痢、グレード3の高血糖、およびグレード4のアシドーシスがそれぞれ1人ずつ認められた。
 
登録された患者のうち4人を除く全員が、すべての治療サイクルと経過観察を完了した。患者報告による評価では、嚥下、口や喉の痛み、声、コミュニケーション、味覚、栄養状態などに関連する症状は、治療中および追跡調査期間中に改善するか、安定した状態を維持した。患者は治療前と比較して、治療後には生活の満足度が向上し、身体活動量も増加したと報告した。
 
研究者らはまた、23人の患者から採取した組織サンプルを解析し、病変内へのニボルマブ投与が、治療を受けた病変と受けなかった病変の免疫微小環境にどのような影響を与えたかを調べた。その結果、治療を受けた病変においてのみ免疫活性化が観察された。具体的には、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、および活性化樹状細胞の浸潤が増加しており、さらに適応免疫応答を示す免疫細胞間の相互作用も認められた。同じ患者の未治療病変では免疫学的変化は認められなかったが、Amit氏によれば、これは病変内投与によってニボルマブの作用が標的部位に効果的に限定されたことを示唆している。
 
「今回の研究結果は、ニボルマブの病変内投与が安全で忍容性が高く、他の非外科的治療法では見られないほどの有効性をもたらすことを示しています。その結果、多くの患者が手術を回避でき、舌、頬、口腔底、口蓋など、口腔内の一部を切除する必要がなくなったのです」とAmit氏は述べた。「たとえ患者が後に手術を受けることになったとしても、病変内ニボルマブ投与によって病変サイズが平均60%縮小するため、将来必要となる手術の範囲を大幅に抑えることができます。これにより、患者の生活の質への影響も大きく軽減されることが期待されます」。
 
Amit氏は、この研究結果が口腔病変以外にも応用できる可能性があると述べている。「多くの種類のがんは、前駆病変を経て皮膚や子宮頸部、大腸などに発症します。今回の研究結果は、局所免疫療法薬の投与が、こうした前がん病変に対しても効果的な予防戦略となり得る可能性を示唆しています」。
 
本研究の限界としては、単群デザインであること、追跡期間が短いこと、および有効性を評価するための統計学的検出力を備えたデザインではなかったことが挙げられる。
 
本研究は、Cancer Prevention and Research Institute of Texasの支援を受けて実施された。Amit氏は利益相反がないことを申告している。

  • 記事担当 青山真佐枝
  • 監修 山﨑知子(頭頸部・甲状腺・歯科/埼玉医科大学国際医療センター 頭頸部 腫瘍科)
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  • 原文掲載日 2026/04/21

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