ヨガは放射線治療中の頭頸部がんの治療関連合併症を予防

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCOの見解から引用

「本結果により、対面またはオンラインで行うヨガ集中介入は、放射線療法中のがん患者だけでなく介護者にも効果があることが認められました。この介入は、身体機能、回復、栄養摂取に効果があります」。
-ASCOの専門家、Charu Aggarwal医師(公衆衛生学修士(MPH)、米国臨床腫瘍学会フェロー(FASCO)

研究要旨

目的放射線治療を受ける頭頸部がん患者の支持療法
対象者放射線治療を25回以上受ける予定の患者100人およびその介護者
主要な結果介護者も含めたヨガプログラムは、放射線療法中の頭頸部がん患者の身体的機能低下を予防する
意義 ・口腔内や喉が腫れて痛みを伴う口内炎である口腔粘膜炎、および嚥下困難は、頭頸部がん治療時によく認められる副作用であり、食べたり飲んだりする身体機能を低下させる一因となる。このような身体機能の低下は、救急外来の受診や経管栄養の処置など、医療利用の増加につながる傾向がある。
・頭頸部がん治療は、介護者にもストレスとなる。
・これらの影響を緩和できる介入がきわめて必要である。

放射線治療を受ける頭頸部がん患者は、身体機能の低下や医療利用の増加につながる副作用を起こす可能性がある。新たな研究によると、特に家族介護者も参加するヨガにより、悪影響を及ぼす副作用が軽減し、経管栄養の処置や緊急外来の受診が減少することがわかった。本研究は、10月28日~29日にボストンで開催される2023年米国臨床腫瘍学会(ASCO)のクオリティ・ケア・シンポジウムで発表される。

研究について

「本研究は、患者本位の行動介入と、患者と介護者を含む介入とを比較した最初の研究の一つです」と、本研究筆頭著者のKathrin Milbury博士(テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター(テキサス州ヒューストン)行動科学科准教授)は述べた。

本研究では、25回以上の放射線治療を受ける予定の頭頸部がん患者100人およびその介護者を対象とした。患者の平均年齢は60.3歳、85%が男性、15%が女性、79%が非ヒスパニック系白人、16%がヒスパニック系白人、2%が黒人、2%がアジア人、1%がバイレイシャル(両親の人種が異なる人)、67%が早期がん患者、54%が化学療法と同時に放射線療法を受けていた。介護者の年齢中央値は54.9歳、83%が女性、17%が男性、73%が非ヒスパニック系白人、15%がヒスパニック系白人、7%がアジア系、3%がバイレイシャル、2%が黒人であった。

介護者同伴ヨガ群(n=34)、患者単独ヨガ群(n=33)、通常ケア群(n=33)のいずれかに患者を無作為に割り付けた。両ヨガ群のヨガプログラムはセッション15回で構成され、対面またはオンラインで行われ、セッションは患者の放射線治療のスケジュールと並行して行われた。プログラムは、頸部や顔筋のストレッチならびに強化、筋肉減少を防ぐ全身姿勢、および呼吸と瞑想の練習など、頭頸部がん治療でよく認められる副作用の予防と軽減に焦点を当てた姿勢が含まれるように組まれた。放射線治療中に患者が不安を抱くことは多く、本研究では治療中にベンゾジアゼピン系薬剤の代わりにこのリラクゼーション運動を行っていた患者もいたことを著者らが記録している。

主な知見

患者の電子カルテから経管栄養の処置、救急外来の受診、入院に関する情報を抽出した。さらに、患者らは放射線治療期間中、Scored Patient-Generated Subjective Global Assessment(PG-SGA)の自己申告部分に通常の食事摂取量と比較した現在の食事摂取量を週単位で記入した。

研究結果

  •  ヨガセッションへの参加率は両ヨガ群とも高く、参加者の88%が10セッション以上出席していた(介護者同伴ヨガ群では13.1セッション、患者単独ヨガ群では13.3セッション)。
  •   患者が報告した身体機能と栄養摂取量については、通常ケア群と比較して、介護者同伴ヨガ群を支持する有意な効果が観察された。両ヨガ群の患者は、通常ケア群の患者と比較して、経管栄養の処置が有意に少なかった。
  •   救急外来の受診への影響には有意傾向が認められたが、入院への影響には有意差が認められなかった。

「患者単独ヨガ群と介護者同伴ヨガ群に有意な群間差が認められなかったことは、両ヨガ群ともにヨガセッションへの参加率が高かったことが関係していると思います。ヨガの利点の1つはストレスの即時緩和であり、参加者はヨガプログラム開始早々にその効果を実感しているのです」と、Milbury博士は語った。

次のステップ

研究者らは現在、化学放射線療同時併用療法を受けている頭頸部がん患者を対象にした介護者同伴ヨガ介入を研究している。また、少数民族や十分な医療を受けられない人々の間でこの介入が受け入れられるかどうかを検証する予定である。

本研究は米国がん協会より資金提供を受けた。

  • 監訳 山崎知子(頭頸部・甲状腺・歯科/埼玉医科大学国際医療センター 頭頸部 腫瘍科)
  • 翻訳担当者 平 千鶴
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  • 原文掲載日 2023/10/23

 

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