dMMR固形がんに対してctDNA有無に基づく術後PD-1阻害薬が効果を示す

ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)早期固形がんで、術後、検出可能な循環腫瘍DNA(ctDNA)が陽性の患者に対して抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を投与すると、微小残存病変(MRD)が消失し、再発の予防効果が認められた。第2相臨床試験の予備的結果によるもので、2025年4月25日から30日に開催された米国癌学会(AACR)年次総会で発表された。

PD-1/PD-L1免疫チェックポイント阻害薬はdMMRがんに有効であり、発生部位を問わずdMMRを有する進行固形がん、dMMR大腸がんの一次治療、および一部の周術期治療で承認されている。

しかし、早期dMMR腫瘍のほとんどが手術のみで治癒することを考慮すると、再発リスクの高い患者には慎重に治療を適用し、リスクの低い患者には治療費用の負担や合併症を回避することが必要である、と本試験の発表者で、メモリアルスローンケタリング(MSK)がんセンター医学部消化器腫瘍科のチーフアテンディング(指導医)であるYelena Y. Janjigian医師は説明する。今回のMSKの試験は、再発と予後不良のバイオマーカーとして知られるctDNAを、リスクの高い患者の術後免疫療法の指針として使用できるかどうかを評価した。

「MSKの同僚であるMichael Foote医師とUniversity Hospitals Seidman Cancer CenterのMelissa Lumish医師とともに、ctDNA陽性患者に対して免疫療法薬により早期に介入することで、臨床的再発を予防できるという仮説を立てました」とJanjigian氏は語る。

Janjigian氏らは、この医師主導の研究において、dMMR腫瘍を切除した患者174人をスクリーニングし、術後6~10週間で検出可能なctDNAを有する患者20人を同定した。そのうち13人(胃食道がん6人、大腸がん5人、子宮内膜がん2人)がペムブロリズマブを投与された。6人のctDNA陽性患者をモニタリングしたが、治療開始前に臨床的病勢進行がみられ、介入コホートに含めなかった。別の1人は評価不能であった。本試験では、切除後の評価でctDNA陰性であったdMMR患者152人を経過観察した(観察群)。

ペムブロリズマブ投与群の患者13人のうち、11人は6カ月の時点でctDNAが消失した。8人は追跡期間中央値32.1カ月時点で再発が認められなかった。一方、ペムブロリズマブ投与前に再発したctDNA陽性患者では、再発までの期間中央値は0.8カ月であった。観察群では、患者の5.9%(9/152人)に再発がみられた。再発までの期間中央値は、ペムブロリズマブ投与群、観察群ともに未到達であった。

2年間の追跡調査における全生存率は、ctDNA陽性ペムブロリズマブ投与群で92.3%、ctDNA陰性観察群で98.5%、ctDNA陽性でペムブロリズマブ投与を受けなかった群では66.7%であった。

「本試験は、治療をしなければ再発する可能性がある患者さんにおいて、ctDNAに基づいた治療が再発の予防となり得ることを示唆しています」とJanjigian氏は言う。

Janjigian氏によれば、この研究は、dMMRがん患者の日常的な臨床判断にctDNA検出を取り入れるための重要な一歩であり、また、ctDNAが、予後の予測だけでなくリアルタイムで治療方針を決定し、最適化する手段としても活用できる画期的なバイオマーカーとなり得ることを示している。

「これまでの研究で、微小残存病変のある患者さんは再発リスクが高いことが立証されていますが、本研究は、こういった患者さんに対してctDNAに基づいて術後免疫療法を行うことで、肉眼的再発が起こる前に残存病変を効果的に除去できる可能性を示しています」とJanjigian氏は述べ、また、大規模ランダム化試験で、より長期の追跡をし、確認する必要があると指摘した。

dMMRがんは、がん症例全体のごく一部に過ぎないが、このアプローチはさまざまながん種にも拡大でき、早期がんにおける免疫療法薬の利用が再定義できるとJanjigian氏は考えている。

「今回の知見は、ctDNAを予測バイオマーカーとして検証する今後の臨床試験の基盤となり、最終的には治癒可能ながん患者さんの転帰を改善するでしょう。リスクの高い患者さんはタイムリーな治療を受けられるようになり、効果が期待できない患者さんは過剰な治療を避けることができます」とJanjigian氏は述べた。

この研究の限界として、サンプル数が少ないこと、長期生存を評価するための追跡期間が比較的短いことなどが挙げられる。さらに、ctDNA陰性の患者でも再発したことを踏まえると、リスク患者全てを特定するためには、さらなるアッセイの改良が必要であることが示唆された。

本試験はMSKのPrecision Interception and PreventionプログラムとCycle for Survivalの支援を受けた。ペムブロリズマブはメルク社から提供された。Yelena Janjigian氏は、メルク社へのコンサルティングおよび講演サービスの提供を報告した。

  • 監修 泉谷昌志(消化器内科、がん生物学/東京大学医学部附属病院)
  • 記事担当者 平沢沙枝
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2025/04/27

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

食道がんに関連する記事

免疫療法薬+TIL療法により、さまざまな転移固形がんが縮小の画像

免疫療法薬+TIL療法により、さまざまな転移固形がんが縮小

個別化がん免疫療法の一種である腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法の新しい方法が、転移消化器がんの患者に対する治療効果を劇的に改善したことが、米国国立衛生研究所(NIH)の研究者らが主導した...
米FDAがニボルマブ+ヒアルロニダーゼ-nvhy皮下注を承認の画像

米FDAがニボルマブ+ヒアルロニダーゼ-nvhy皮下注を承認

2024年12月27日、米国食品医薬品局(FDA)は、ニボルマブ(販売名:オプジーボ、Bristol Myers Squibb社)の承認済みの成人固形がん適応症に対して、単独療法、ニボ...
米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告の画像

米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告

米国保健福祉省(HHS)ニュースリリース飲酒は米国におけるがんの予防可能な原因の第3位本日(2025年1月3日付)、米国公衆衛生局長官Vivek Murthy氏は、飲酒とがんリ...
術前化学放射線+免疫療法薬チスレリズマブで食道がんの予後改善の画像

術前化学放射線+免疫療法薬チスレリズマブで食道がんの予後改善

放射線療法・化学療法・免疫療法薬の併用により、腫瘍を縮小させ手術を可能にすることができ、非外科的治療単独よりもはるかに生存率が向上する切除不能な局所進行食道がん患者において、放...