膵がんに対するRAS阻害薬ダラクソンラシブの初期の抗腫瘍活性

膵がんに対するRAS阻害薬ダラクソンラシブの初期の抗腫瘍活性

・daraxonrasib[ダラクソンラシブ]はRevolution Medicines社が開発した経口のRAS多選択的阻害薬である。
・ダラクソンラシブは、第1/2相の本試験初期データを元に、米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定を取得し、現在は第3相RASolute試験が進められている。
・膵臓がんではRAS変異の頻度が高く、有効な治療選択肢が限られていることから、本治療法の検討が進められている。

RAS変異を有する膵臓がん患者において、RAS標的阻害薬 ダラクソンラシブが、現在の標準治療より治療成績を改善する可能性を示した。本結果は第1/2相試験によるもので、テキサス大学 MD アンダーソンがんセンターの研究者らが主導した。

この研究はThe New England Journal of Medicine誌に掲載され、がん治療研究部門の副部門長である David Hong 医師が主導した。38人の患者に300mgのダラクソンラシブが投与され、奏効率は29%、全生存期間中央値は15.6カ月であった。これは、これまでの二次化学療法の奏効率と比べて大幅な改善を示す結果であった。

「この試験では、この標的治療薬が患者さんの全生存期間を延長する可能性を強く示唆しています」とHong氏は述べる。「私たちは、速やかで持続的な治療効果を確認しました。安全性プロファイル全体も管理可能な範囲であり、ダラクソンラシブの今後の研究を支持する結果でした」。

本研究の意義:膵臓がんに対するダラクソンラシブ

この研究では、膵臓がんの90%以上を占める膵腺がん(pancreatic adenocarcinoma)に対するダラクソンラシブの効果が検討された。膵腺がんは、利用可能な治療の効果が乏しい進行期になってから診断されることが多いため、最も死亡率の高いがんの一つとされている。一次化学療法に奏効する患者は約3分の1にとどまり、二次治療としての化学療法に奏効する患者は10%未満である。こうした患者の全生存期間は、わずか5〜7カ月程度である。

しかし、これらのがんの90%以上はRAS変異によって引き起こされているため、ダラクソンラシブのようなRASを標的とした治療薬によって治療できる可能性がある。

本試験におけるその他の主要データ

この第1/2相用量漸増・拡大試験の主要評価項目は、安全性であった。患者の96%に何らかの副作用が認められた一方で、グレード3以上の重篤な副作用を経験した患者は30%にとどまった。最もよく見られた副作用は、発疹、下痢、口腔・咽頭の炎症(口内炎、粘膜炎)、疲労であった。

300mg投与群では、患者の半数に用量調整が行われたが、副作用を理由に治療を中止しなければならなかった患者はいなかった。また、現在の二次治療として用いられている化学療法も、患者に重大な副作用を伴うことは注目すべき点である。

ダラクソンラシブと他のRAS変異標的治療薬の違い

KRAS などのRASタンパク質に生じる変異は、いくつかの種類のがんにおいて発がんの主要因であることが知られており、その変異には複数のタイプが存在する。現在、最も多く標的とされているのはKRAS G12C変異である。しかし、この変異は一部のがんでは比較的よく見られる一方で、膵臓がんでは比較的まれである。さらに、現在の多くのRAS標的治療薬は、「OFF状態」のRAS変異を標的としているが、KRASは膵腺がんにおいて「ON状態」でがんを増殖させている。ダラクソンラシブは、「ON状態」のRASを阻害でき、さらに複数のRAS変異型を標的にできる。そのため、このタイプの治療薬は膵臓がん治療において、より幅広い可能性を持つことが示唆されている。

この試験の初期データは、2025年ASCO消化器がんシンポジウムで発表された。その結果を受け、ダラクソンラシブはFDAから希少疾病用医薬品指定を取得し、現在第3相RASolute試験が進行中である。

この試験はRevolution Medicines社の資金提供を受けて実施された。共同著者および利益相反情報の完全な一覧は、論文全文で確認できる。

  • 記事担当 平沢沙枝
  • 監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
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  • 原文掲載日 2026/05/06

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