認識されていない大腸がんの危険因子:アルコール、高脂肪加工食品、運動不足

オハイオ州立大学総合がんセンター

仕事中にあまり身体を動かさず肥満率が上昇している現代アメリカでは、何を飲食し、どのくらい身体を動かすかによって大腸がん(30〜50代の罹患者が増えつつあるが予防可能ながん)のリスクが増減しうることを知らない人が多い。

このことは、大腸内視鏡検査のおかげで高齢者の大腸がんは減少しているにもかかわらず、50歳未満の罹患率が上昇し続けているため、非常に懸念される点である、とオハイオ州立大学総合がんセンターのアーサー・G・ジェームスがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(​​OSUCCC - James)の専門家は言う。

「大腸内視鏡検査は、極初期のがん、時に前がん状態を検出して救命しますが、45歳以前で平均的リスクの人には推奨されていません」とOSUCCC - Jamesの大腸外科主任でオハイオ州立大学医学部教授のMatthew Kalady医師は言う。

アルコール、肥満、食事が大腸がんのリスクを高める

OSUCCC - Jamesが委託した最近の調査によると、米国成人の多くは、大腸がんの危険因子として家族歴(DNAにより家系に受け継がれるリスク)を認識している一方で、アルコール摂取、身体活動の不足、脂肪分や加工食品の多いアメリカ型の食事など、その他の要因についてはあまり知られていないことがわかった。

今回の消費者調査では、18歳以上の成人約1,000人を対象に、大腸がんの危険因子についての知識を尋ねた。
その結果、
・アルコール摂取が危険因子であることを知っている回答者は半数以下(49%)
・5人に2人は、身体活動の不足が危険因子であることを知らない(42%)
・3分の1以上は、肥満やアメリカ型食事(高脂肪、加工食品)が危険因子であることを知らない(38%、37%)
・5人に4人は、家族歴が危険因子であることを知っている。

リスク増加傾向の黒人とヒスパニック系は危険因子についてあまり知らない

大腸がんの危険因子に関する知識不足は、白人に比べて黒人とヒスパニック系で最も高かった。アメリカがん協会によると、黒人アメリカ人は大腸がんを発症し死亡する確率が他より高く、また、ヒスパニック系アメリカ人の大腸がん罹患率は、他のどの人種・民族グループよりも急速に上昇しているという。危険因子に対する認識が高まれば、検診を受けたり、大腸がんになる可能性を減らすように生活習慣を改めたりするようになるかもしれない。

大腸がんは20年前から50歳未満で増加している

米国国立がん研究所のデータによると、大腸がんの罹患率は1990年代から50歳未満で上昇している。これは大きな懸念事項であり、米国予防医療専門委員会(USPSTF)はつい最近、検診の推奨年齢を50歳から45歳に引き下げた。つまり、スクリーニングの推奨年齢以前にがんを発症する人が多いということである。

「大腸がんリスクには多くの要因があることを理解してもらうことが大事です。がんのリスクを減らすことができるのであればその努力をすべきです。そのような努力はがんリスクに影響を与えるだけでなく、全体的な健康状態を改善する可能性が高いのです」とKalady氏は言う。

Kalady氏によれば、健康的な生活習慣の力を軽視すべきではない。これには、食物繊維が多く、脂肪分が少なく、赤肉(牛や豚肉など動物の肉)は控えめで、果物と野菜を毎日4〜6皿(※英語ではサービング。1サービング70g~100g程度)食べることが含まれる。そうすることで、健康的な体重を維持し、炎症を抑えることができる。

「理想体重より体重が増えれば増えるほど、大腸がんを発症するリスクが高くなります。ですから、健康的な食事や定期的な適度な運動など、簡単ですが重要なステップを踏むことは、健康全般に大いに役立ちます」とKalady氏は言う。

「遺伝的リスクはあまり一般的ではありませんが、大腸がんの生涯リスクを大きく高める可能性があるので、適宜遺伝カウンセリングを受けることが重要です」と彼は注意した。

年齢に関係なく症状があれば受診

「『正しい』ことを全部やってもがんにかかる時はかかります。ですから、大腸がんの症状がある人は、年齢に関係なく、すぐに医師の診断を受けることが重要です。早期がんは治療可能性が高く、完治することも少なくありません。進行すると治る可能性は低くなります」とKalady氏は言う。

調査方法

この消費者調査は、オハイオ州立大学総合がんセンターのためにSSRS社のOpinion Panel Omnibusで実施した。SSRS Opinion Panel Omnibusは、全国規模で月2回行われる、確率的方法に基づく調査である。データ収集は2024年2月2日から4日に1,006人の回答者を対象として行われた。調査はウェブ(976名)と電話(30名)で実施され、英語で行われた。全回答者の誤差は95%信頼水準で±3.5%である。すべてのSSRSOpinion Panel Omnibusのデータは、対象母集団である18歳以上の米国成人を代表するように加重されている。

  • 監訳 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
  • 翻訳担当者 奥山浩子
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  • 原文掲載日 2024/02/26

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