切除不能進行/再発胃がんにおける抗PD-1抗体の臨床効果の分子学的考察

切除不能進行/再発胃がんにおける抗PD-1抗体の臨床効果の分子学的考察

切除不能進行/再発胃がんに対する抗PD-1抗体薬治療で
より良好な治療効果が見込める患者を選別できる可能性のあるバイオマーカーを発見

救済療法として抗PD-1モノクローナル抗体薬ペムブロリズマブの投与を受けた切除不能進行/再発胃がん患者61人の組織および循環腫瘍DNA(ctDNA)の分子生物学的解析により、奏効に関連する特徴についての知見が前向き第2相臨床試験で示された。ソウルのサムスンメディカルセンターの韓国人研究者がNature Medicine誌でこの結果を発表した。

Jeeyun Lee氏とWon Ki Kang氏が主導した研究グループは、これまでの臨床試験の結果から、切除不能進行/再発胃がん患者におけるPD-1標的治療の有効性は裏付けられているものの、奏効を決定する因子は同定されていないため、今回の解析を行ったことを背景として述べている。

高頻度マイクロサテライト不安定性とエプスタイン・バーウイルス陽性の患者において(これらは相互に排他的である)ペムブロリズマブの劇的な奏効がみられた。全奏効率(ORR)は、高頻度マイクロサテライト不安定性で85.7%、エプスタイン・バーウイルス陽性の切除不能進行/再発胃がん患者で100%であった。

PD-L1陽性複合スコアが陽性(陽性複合スコアのカットオフ値は1%以上)胃がん患者55人の全奏効率は、PD-L1陰性がん患者と比較して統計的に有意に高かった(50.0%対0.0%、p <0.001)。

治療後6週間の時点でのctDNAレベルの変化により奏効と無増悪生存期間が予測でき、ctDNAの減少は良好な治療結果との関連があった。

これらの結果により、切除不能進行/再発胃がん患者のペムブロリズマブの奏効に関連する分子生物学的特徴についての知見や、PD-1阻害でより良好な治療効果が見込まれる患者を選別できる可能性があるバイオマーカーが示された、と本研究の研究者は結論付けた。

この研究は、米国Merck Sharp&Dohme社のMISPプログラムと、韓国保健技術研究開発プロジェクト(HI16C1990)の助成を受けて行われた。

著者のうち6人はMerck Sharp社の子会社であるMerck Sharp&Dohme社の従業員であり、2人の著者は米国Guardant Health社の従業員である。

参照

Kim ST, Cristescu R, Bass AJ, et al. Comprehensive molecular characterization of clinical responses to PD-1 inhibition in metastatic gastric cancer. Nature Medicine, Published online 16 July 2018. doi: 10.1038/s41591-018-0101-z.

翻訳担当者 山岸美恵野

監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

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原文掲載日 

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