モノクローナル抗体薬dostarlimab投与でdMMR直腸がんが消失

抗PD-1モノクローナル抗体ドスタルリマブによる直腸がん治験治療の第2相試験において、患者12人中12人で腫瘍が完全に消失したことが、早期結果で明らかになった。

患者は全員、ミスマッチ修復機構欠損を有する局所進行がん(直腸がん患者の5~10 %)であり、ほぼ全員がステージ3の直腸腺がんであった。

本剤の静注を3週間に1回、6カ月間行った。治療後に標準的化学放射線療法および手術を行う予定であったが、それらが必要とされることはなかった。

スローンケタリング記念がんセンター(ニューヨーク)のLuis Diaz医師らは、The New England Journal of Medicine誌で次のように発表した。「(6~25カ月の追跡期間で)どの患者も化学放射線療法も手術も受けていない。再発の症例報告もない。ドスタルリマブ単独投与終了後、患者4人が臨床的完全奏効を1年間持続していた」。

本結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO22)で発表された。

ノースカロライナ大学のHanna Sanoff医師は、次のように述べている。

「本結果は非常に期待を持てるものですが、この治療法が現在の根治療法にとって代わることはまだない。主要評価項目であった臨床的完全奏効は、長期的がんコントロールの代用としては不完全である。化学療法および放射線療法後に臨床的完全奏効となる患者は、そうでない患者よりも予後はよいが、手術を受けない場合、20~30%でがんが再び増殖する」。

本治療による副作用は、発疹、皮膚炎、掻痒(かゆみ)、疲労感、悪心で、グレード3以上の有害事象は報告されていない。

ドスタルリマブは現在、子宮内膜がん治療で認可されている。グラクソ・スミスクライン(GSK)により、Jemperliという販売名で市販されている。9回投与する費用は、1回分11,000ドル弱である。

出典: The New England Journal of Medicine 2022年6月5日

日本語記事監修 :野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)

翻訳担当者 平 千鶴

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

大腸がんに関連する記事

特定の遺伝子変化を有する大腸がん治療が免疫療法のみへと変わる?の画像

特定の遺伝子変化を有する大腸がん治療が免疫療法のみへと変わる?

一部のがん患者にとっては、6カ月の免疫療法だけですむかもしれない、あるいは4週間の免疫療法薬の後に小さな手術をするだけで治療が終わるといった可能性はあるのだろうか。

局所進行がんを有する一部の患...
FDAがツカチニブ+トラスツズマブ併用を進行性結腸直腸がんに承認の画像

FDAがツカチニブ+トラスツズマブ併用を進行性結腸直腸がんに承認

大腸がんのうち、外科的切除不能あるいは体の他の部分に転移のある患者の一部に対する新たな治療選択肢が登場した。米国食品医薬品局(FDA)は1月19日、HER2というタンパクを過剰に発現する進行し...
次世代の免疫療法薬2剤(botensilimab、balstilimab)は大腸がんに有効の画像

次世代の免疫療法薬2剤(botensilimab、balstilimab)は大腸がんに有効

次世代免疫療法薬2剤の併用は、これまで免疫療法薬があまり効かなかった難治性転移大腸がん患者の治療に有望な臨床効果を示すことがダナファーバーがん研究所の研究で明らかになった。

サンフランシスコで1...
FDAが大腸がんにツカチニブ+トラスツズマブ併用療法を迅速承認の画像

FDAが大腸がんにツカチニブ+トラスツズマブ併用療法を迅速承認

2023年1月19日、米国食品医薬品局(FDA)は、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンベースの化学療法後に進行したRAS遺伝子野生型かつHER2陽性の切除不能または転移性の大腸...