脳腫瘍(GBM)におけるケトン食療法の最新の系統的レビューと全米前向き試験

脳腫瘍(GBM)におけるケトン食療法の最新の系統的レビューと全米前向き試験

膠芽腫におけるケトジェニックダイエットの有効性と安全性:最新の系統的レビューとメタ解析結果、および進行中の前向き臨床試験

 膠芽腫(GBM)は成人における最も悪性度が高く侵襲的な原発性脳腫瘍であり、多角的治療を尽くしてもなお、生存期間は大きな改善が見られず、予後不良の腫瘍である。 GBM細胞は、周囲の脳細胞よりも糖をすばやく分解してエネルギー源にする特性(ワールブルグ効果)を持ち、グルコース(糖)を大量に消費し、逆に脂肪をエネルギー源にすることができない。ケトン食療法は、この代謝の特性を突いて体内の糖利用を抑え、代わりに正常細胞にはエネルギーとなる「ケトン体」を増やすことで、腫瘍細胞を選択的なエネルギー飢餓状態に陥らせる新たな代謝療法として注目されている。

【大規模なデータ分析(メタアナリシス)結果
膠芽腫(GBM:悪性脳腫瘍の一種)の標準治療におけるケトジェニックダイエット(ケトン食療法)の有効性と安全性を評価する、2025年9月までの臨床データ(計41件の研究(臨床試験、コホート研究、症例報告など)を含む)を網羅した最新の系統的レビューおよびメタ解析(いくつかの論文をまとめて統計的に分析すること)が報告された(Neurological Sciences, 「Efficacy and safety of ketogenic diet in glioblastoma: an updated systematic review and meta-analysis」 25 April 2026 )。

生存期間が約2倍に: 標準治療(手術・放射線・抗がん剤)に加えてケトジェニックダイエットを「きっちり継続できた(高いケトン状態を維持できた)患者グループ」では、生存期間の中央値が 29.4カ月 に達したと報告されている。これは、通常の標準治療のみの一般的なデータ(約14.6カ月)の約2倍である。
3年生存率の劇的な向上: 同データにおいて、しっかりと食事を継続できたグループの3年生存率は 66.7% であった(通常の歴史的データでは約8.3%)。
高い安全性: 多くの論文で、食事療法による重篤な副作用(グレード3/4の毒性)は認められず、軽度の消化器症状や疲労感にとどまり、安全性と実行可能性(続けやすさ)が高いことが証明されている。

このような報告とともに、現状、ケトジェニックダイエットは、てんかんを除く多くの適応では十分な科学的エビデンスが確立されているとはいえないため、さらに現在、下記の前向き臨床試験が進行中である。

注目される進行中の全米規模の臨床試験
現在、アメリカなどで非常に注目されているのが「DIET2TREAT」(治療のための食事療法)と呼ばれる多施設共同の第2相ランダム化比較試験で、GBM患者を対象にケトジェニックダイエットの効果を検証している国際的臨床試験(治癒・研究プロジェクト)。Cedars-Sinai (シダーズ・サイナイ医療センターを主導施設とし、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)Duke University (デューク大学)、他が参加している。

新たにGBMと診断された患者を対象に、「通常の抗がん食事ガイドラインに従うグループ」と「ケトジェニックダイエットを行うグループ」にランダムに分け、標準治療と併用した際の効果を厳密に比較し、 18カ月時点での生存率や、腫瘍の再発をどれだけ遅らせられるか(無増悪生存期間)、さらに患者の「生活の質(QOL)」や認知機能がどう維持されるかを検証している。この結果によって、将来的にケトン食療法が正式な治療ガイドラインに組み込まれるかどうかが大きく左右されるとみられる。


ーーケトン代謝療法(ケトン食療法、ケトジェニックダイエット)とは
ケトン食療法とは、食事の糖質を極限まで減らし、『良質な脂質』にシフトさせる食事療法。グルコース・ケトン指数(GKI)」を遵守バイオマーカーとして、食事と投薬の両方で管理する。
通常、私たちの体(脳や筋肉)は「ブドウ糖(糖質)」を優先的なエネルギー源として利用している。しかし、糖質が入ってこなくなると、体は代わりに脂肪を分解して「ケトン体」という物質を作り出し、それをエネルギーとして使うようになる。この状態を「ケトーシス」と呼ぶ。がん細胞(特に膠芽腫などの悪性脳腫瘍)の多くは、糖質を大量に消費して増殖する一方で、ケトン体をエネルギーとしてうまく利用できないという弱点(ワールブルグ効果)を持つため、これを利用し、正常細胞にはケトン体で栄養を送りつつ、がん細胞だけをエネルギー飢餓状態に陥らせる治療研究が進められています。

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  • 原文掲載日:2026年4月25日
  • 記事作成:野中希
  • 監修:夏目敦至(脳神経外科/一宮西病院 脳神経外科・脳腫瘍センター長)

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