免疫療法薬ドスタルリマブは顕著な完全奏効率を示し、手術の代替となりうる
メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSKCC) 要約記事
米国シカゴで2025年4月27日に発表された臨床試験の新たな結果により、免疫チェックポイント阻害薬が一部のがん治療において、手術や放射線治療、化学療法に代わる選択肢となり得る可能性が示された。本研究は、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSK)主導で行われ、研究結果は、2025米国癌学会(AACR)年次総会で発表、同時にThe New England Journal of Medicine(NEJM)にも掲載された。
対象は、MMRd(ミスマッチ修復機能欠損)と呼ばれる遺伝子の特徴を持つ固形がん患者であり、免疫療法単独によって臓器を温存しつつ生活の質を維持できるかが検証された。この特定のMMRd遺伝子変異を有する多くのがんに対する標準治療は、 手術、放射線療法、化学療法であったが、今回の試験で、免疫チェックポイント阻害薬を6か月間単独で受けた患者のうち、約80%が手術、放射線治療、化学療法のいずれも必要としなかったことが示されている。
今回の第2相試験は、以前に行われた画期的研究の延長線上にある。過去の研究では、直腸がん患者全員が免疫療法薬ドスタルリマブ(販売名:Jemperli[ジェンペルリ])によって完全奏効を示し、腫瘍が消失した。この成果を受け、米国食品医薬品局(FDA)は2024年12月に、このタイプの直腸がん治療に対してドスタルリマブを「画期的治療薬」に指定している。
患者の対象等が新たに更新され、今回の試験結果ではステージ1〜3のがん患者103人が参加していた。内訳は直腸がん49人、非直腸がん54人であり、非直腸がんには食道胃接合部、肝胆膵、結腸、泌尿生殖器、婦人科領域のがんが含まれている。患者は6か月間、GSK社が開発したPD-1阻害薬であるドスタルリマブの投与を受けた。免疫チェックポイント阻害薬は、体内の免疫系ががん細胞を認識し攻撃できるようにする作用を持つ。
| 患者数 | 完全奏効 | |
| 全被験者数 | 103人 | |
| 直腸がん | 49人 | 100% |
| その他のがん(食道胃接合部、肝胆膵、結腸、泌尿生殖器、婦人科領域のがん) | 53人 | 65%(35人) |
| 全完全奏効 | 84人 | 49人(直腸がん)+35人(その他のがん) |
| 完全奏効・手術不要 | 82人 |
試験の結果、複数のがん種において免疫療法薬のみで治療が成功し、反応を示した患者は臓器切除を伴う手術を受ける必要がなく、化学療法や放射線治療も施行されなかった。これにより、生活の質が大きく改善されたと報告されている。本研究は、免疫療法薬がさまざまな固形腫瘍において手術に代替し得ることを初めて示した点で重要である。
「この研究は、免疫チェックポイント阻害薬が手術や放射線、化学療法に代わり得ることを示しており、臓器を温存し、治療による深刻な副作用を避けられる可能性があります。がんを制御しながら患者さんの生活の質を守ることが最良の結果です。患者さんは日常生活に戻り、自立した生活を維持できます」と、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター、消化器腫瘍専門医Cercek医師は本研究について語る。
また、Diaz医師(MSKの消化器腫瘍専門医であり固形腫瘍学部長)は、「試験に参加した多くの患者さんで腫瘍が完全に消失しました。これらの結果は、がん治療の在り方を変える可能性があります」と述べている。さらに、従来の治療法である手術、放射線、化学療法は生活の質に深刻な影響を及ぼすことがあり、特に直腸がんでは不妊や排便・排尿障害、性機能障害など、日常生活に大きな負担をもたらす可能性があると指摘している。
本研究は、がん治療における免疫療法の役割を再定義し、患者中心の治療戦略を進める上で重要な一歩となるものである。
- 監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/オックスフォード大学腫瘍部門)
- 参考記事
- 原文掲載日 2025/04/27
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