サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)でのダナファーバー研究発表

サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)でのダナファーバー研究発表

第45回サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS、2022年12月6日〜10日)において、ダナファーバーがん研究所の研究者が30件以上の調査研究を発表する。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)は、世界中から数千人の乳がん専門家が集結する世界で最も包括的な乳がん学術会議である。今年の会議では、臨床研究​​、トランスレーショナル(橋渡し)研究、および基礎研究を取り扱ったスポットライトセッション、ディベート、ポスター、講演、および教育セッションをダナファーバーの研究者が参加する。

以下、ダナファーバーの研究者による発表の一部を紹介。


◆ホルモン反応性乳がんに対する治療を中断した場合の妊娠成績と安全性:POSITIVE試験の主要結果(GS4-09)

発表者:Ann Partridge医師、公衆衛生学修士 12月8日(木) ***サンアントニオ乳がんシンポジウム記者会見にて発表

Ann Partridge医師は、POSITIVE試験の結果を発表する。この試験は、ホルモン受容体陽性の早期乳がんを有する若年女性において、妊娠を目的としてホルモン療法を一時中断することが乳がん再発のリスク上昇と関連するかどうかを調べる前向き試験である。

◆CDK4/6阻害剤およびホルモン療法後のパルボシクリブ(PACE):ホルモン前治療を受けたER陽性HER2陰性の転移性乳がんに対するフルベストラント、パルボシクリブ、アベルマブのランダム化第2相試験 (GS3-06)

発表者:Erica Mayer医師、公衆衛生学修士 12月8日(木)

Erica Mayer医師は、CDK4/6阻害剤およびホルモン療法後のパルボシクリブ( Palbociclib After CDK4/6i and Endocrine Therapy、PACE)第2相臨床試験の結果を発表する。CDK4/6阻害剤とアロマターゼ阻害剤による治療後に進行した、エストロゲン受容体陽性HER2陰性の転移性乳がん患者において、CDK4/6阻害剤パルボシクリブ(販売名:イブランス)とフルベストラント(販売名:​​フェソロデックス)を投与しても、フルベストラント単独投与に比べて無増悪生存期間(がんが悪化することなく生存できる期間)が延長されないことが、PACE試験第2相の結果によりわかった。 しかし、パルボシクリブとフルベストラントに加え、免疫療法薬アベルマブ(販売名:バベンチオ)を投与した患者では、無増悪生存期間が改善された。 220人の患者を対象としたこの試験では、フルベストラント単独投与群では無増悪生存期間中央値が4.8カ月であったのに対し、フルベストラントとパルボシクリブ投与群では4.6カ月、3剤併用群では8.1カ月であった。この患者集団にとって心強い結果である。

◆ER野生型およびER変異型乳がんにおけるCDK4/6阻害剤のクローン進化と獲得耐性のメカニズム(GS3-07)

発表者:Cristina Guarducci博士 統括著者:Rinath Jeselshon医師 12月8日(木)

エストロゲン受容体陽性の転移性乳がん患者において、治療の早い段階で、CDK4/6阻害剤およびホルモン療法という標準的な併用療法に第3の薬剤を追加すれば、薬剤耐性の発現を遅らせ治療効果を延長させる可能性があることが、新たな研究により明らかになった。 この結果は、実験室で培養した乳がん細胞(正常なエストロゲン受容体を持つ細胞やY537S変異がある受容体を持つ細胞)を、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリブまたはアベマシクリブで治療しながら、クローンの進化を追跡して得られたものである。 これらの薬剤は増量しながら投与され、細胞が薬剤耐性を獲得するまで続けられた。 研究者らはまた、エストロゲン受容体変異を有するCDK4/6阻害剤耐性細胞のクローン進化を、動物モデルにおける転移性エストロゲン受容体変異細胞の進化と比較し、 CDK4/6阻害剤に対する耐性の発現は、治療前から存在したある腫瘍細胞小集団の急増に起因すること、Y537S変異はパルボシクリブに対する耐性発現に影響するが、アベマシクリブにはそれほど影響しないことを明らかにした。 また、パルボシクリブとアベマシクリブではクローンの選択と進化が異なることを示し、これら2つの薬剤の違いを浮き彫りにした。これらの知見は、CDK4/6阻害剤とホルモン療法による治療の初期に第3の薬剤を補うことで、CDK4/6阻害剤に耐性を持つ細胞が優勢となる過程を遅らせ、治療に対する効果を延長させることが可能であることを示唆している。

◆I期HER2陽性乳がんに対する術後薬物療法としてのトラスツズマブエムタンシン療法とパクリタキセル+トラスツズマブ療法の比較:ATEMPT試験による5年成績と相関解析

発表者:Paolo Tarantino医師 12月9日(金)

HER2陽性のI期乳がん患者に対する術後薬物療法としてのトラスツズマブエムタンシン(T-DM1、販売名:​​カドサイラ)の有効性に関する以前の知見を、フォローアップ試験の結果が支持するものである。 ATEMPT試験の主要な知見では、抗体薬物複合体であるトラスツズマブエムタンシンによる治療を受けた患者の97.8%が、治療後3年間生存し、浸潤性乳がんがないことが確認された。 今回の新たな結果では、治療から5年後に患者の97%が生存し浸潤性疾患がなく、98.3%にがんの再発がないことが示された。 また、研究者らは、187人の試験参加者の腫瘍組織を最新のHER2DXゲノムツールで解析して再発リスクが有意に高い腫瘍の小集団を特定し、腫瘍径の小さいHER陽性乳がんに対する術後薬物療法の精度向上への道を開いた。

◆リンパ節転移陰性ヒト上皮成長因子受容体2陽性(HER2+)乳がんに対するパクリタキセルとトラスツズマブによる術後薬物療法(APT)試験:最終10年成績と相関解析

発表者:Sara Tolaney医師、公衆衛生学修士 12月9日(金)

パクリタキセルとトラスツズマブによる術後薬物療法(Adjuvant Paclitaxel and Trastuzumab、APT)試験は、腫瘍径の小さいリンパ節転移陰性HER2陽性乳がんに対するパクリタキセルとトラスツズマブによる術後薬物療法の効果を評価したものである。この試験で得られた初期の知見により臨床診療は大きく変わり、現在APT療法は世界中で治療の標準とされている。サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された本試験の最終解析では、10年間の追跡調査後、パクリタキセルとトラスツズマブの術後薬物療法は、腫瘍径の小さいリンパ節転移陰性HER2陽性乳がんに対して優れた長期治療成績を確立し、96.3%の患者に10年間腫瘍の再発がないことが報告された。さらに、最新のHER2DXゲノムツールを試験参加者284人の腫瘍に使用したところ、再発リスクと有意に関連することが確認された。

監訳 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター乳腺腫瘍内科)

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原文掲載日 2022/12/02

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