CDK阻害薬は、ER陽性再発乳がんにおける免疫療法の効果を上げる可能性
・再発・転移乳がんは治療に抵抗性で、命にかかわることが多い。
・これらの腫瘍は、免疫細胞の数が少ないことが多いため免疫療法が効きにくい。
・今回の前臨床研究では、CDK4/6阻害薬の追加によって、免疫療法がER陽性の転移再発乳がんに対する有効な治療選択肢となる可能性が示唆された。
ホルモン療法と併用することで乳がんの進行を抑制する一群の薬剤は、再発・転移乳がんにおいて免疫療法の効果を高める可能性もあることが明らかになった。これは、オハイオ州立大学総合がんセンターのアーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所からなるオハイオ州立大学総合がんセンター(OSUCCC – James)の研究者らが主導した研究の結果である。
この動物実験で得られた知見は、Cell Reports誌で発表されており、CDK4/6阻害薬と呼ばれる薬剤が、エストロゲン受容体陽性(ER+)転移乳がんに対する免疫療法の効果を高める可能性を示唆している。
「CDK4/6阻害薬は、新たに診断された乳がんの進行を効果的に抑えるものですが、がん細胞を殺傷するわけではありません」。「その結果、がんが再発することが多く、再発疾患に対する有効な治療法はないため、致死的ながんです」と、臨床試験責任医師のAnna Vilgelm医師は述べている。同氏はOSUCCC-James Translational Therapeutics Programのメンバーであり、オハイオ州立医科大学の助教である。
「今回の知見は、CDK4/6阻害薬と免疫療法を組み合わせることで、ER陽性再発転移乳がんに有効な治療法を提供できる可能性を示唆しています」とVilgelm氏は述べる。
具体的には、乳がんの動物モデルにおいて、CDK4/6阻害薬が、養子T細胞移植やT細胞活性化抗体など、T細胞ベース治療法の効果を向上させることが本研究で示された。
免疫療法は、さまざまながんに有効な治療法であることがわかってきているが、進行乳がんには有効ではない(*監修 者注:トリプルネガティブ乳がんには有効である)。問題の一つとして、乳がんは多くの場合、腫瘍内にがんを殺すTリンパ球の数が少ない。このような腫瘍は、免疫療法への反応が悪い傾向にある。
「さらに、腫瘍内浸潤リンパ球の数が少ない乳がん患者は、それが多い患者に比べて生存率が低いことが多い」と、Vilgelm氏は言う。
今回の研究では、CDK4/6阻害薬の作用によって、T細胞を引き寄せるケモカインと呼ばれる小さなタンパク質を乳腺腫瘍が分泌することが明らかになった。これにより、がん免疫療法に対する患者の反応を改善することができる。
本研究において、Vilgelm氏らは、経口CDK阻害薬パルボシクリブ、マウスモデル、乳がん細胞株、およびThe Cancer Genome Atlas(TCGA)の解析を用いて、CDK4/6阻害薬とケモカイン産生が腫瘍免疫微小環境および患者の転帰に与える影響について調べた。
主な結果は以下の通りである。
・CDK4/6阻害薬による前治療により、腫瘍へのT細胞の動員が改善され、動物モデルにおける養子細胞療法の成果が向上した。
・CDK4/6阻害薬を投与したヒト乳がん細胞は、T細胞を引き寄せるケモカインを産生する。
・ケモカインの発現は、乳がん患者の予後に関して好都合な要因であることが、TCGA解析により明らかになった。
・CDK4/6阻害によるケモカイン誘導には、mTORが制御する代謝活性が必要である。
・T細胞を活性化するケモカインは、免疫療法の対象となる患者を層別化するための有用な予後指標となる可能性がある。
「全体としては今回の結果から、CDK4/6阻害薬は、乳がん腫瘍にT細胞を引き寄せ、免疫療法への感受性を高める治療戦略となる可能性があることが示唆されました」と、Vilgelm氏は述べている。
本研究の資金供給源は以下のとおりである:This study was supported by grants from the Breast Cancer Research Foundation, the National Institutes of Health (CA098131, CA233770-01, CA116021, CA116021-S1, CA68485, CA16672) and the Department of Veterans Affairs.
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