テクスチャードタイプのインプラントで乳がん再発リスクが増加

テクスチャードタイプのインプラントで乳がん再発リスクが増加

【ロイター】乳房切除後の乳房再建にテクスチャードタイプのインプラントを使用した場合、スムースタイプと比較して乳がん再発のリスクが高くなることが、JAMA Surgery誌で報告された。

「乳がん患者の漠然とした不安を解消するために、インプラントの表面の種類と乳がんの予後に有意な関連は認められないというエビデンスを得ることを目的にこの研究を開始した」と韓国ソウルの成均館大学医学部サムスン医療センターのSa Ik Bang博士らは述べた。

しかし「予想に反して、テクスチャードタイプのインプラント群の無病生存率(DFS)はスムースタイプ群よりも有意に低値で、腫瘍の病期と エストロゲン受容体(ER)の状態を調整した後も依然として有意差があることが明らかになった」と言う。

テクスチャードタイプのインプラントの目的は、被膜拘縮とインプラントの異常回転を減少させることにある。乳房インプラント関連未分化大細胞リンパ腫(BIA-ALCL)は1990年代後半に初めて報告され、テクスチャードタイプのインプラントはその危険因子として提示されているとBang博士らは言及している。テクスチャードタイプの表面にはバイオフィルムが生じる可能性が高くなる場合があり、周囲の組織への慢性的な炎症の原因となることを著者らは示唆している。

博士らは、所属する病院で2011年から2016年にかけて乳房全摘出術と即時再建術を受けた患者650人(乳房687個)を調査した。全員がインプラント挿入後少なくとも2年間経過観察された。患者の約40%がスムースタイプのインプラント、60%がテクスチャードタイプのインプラントによる乳房再建手術を受けた。スムースタイプ群とテクスチャードタイプ群は腫瘍の病期の分布が類似しており、補助放射線療法と化学療法の実施率も類似していた。5年間局所無再発生存率および無病生存率(DFS)はそれぞれ96.7%および95.2%であった。

腫瘍の病期とエストロゲン受容体の状態を調整した後、テクスチャードタイプのインプラントを使用した場合の無病生存率は有意に低値であった(ハザード比HR 3.054)。エストロゲン受容体陽性がん患者(HR 3.13)と浸潤がん患者(HR 3.044)でも同様の関連があった。2期または3期の病変を有する患者で特に関連が顕著であった(HR 8.874)。インプラントの表面のテクスチャと局所無再発生存率の関連は認められなかった。

著者らは、テクスチャードタイプのインプラントにより全身性の炎症が引き起こされ、その炎症が乳がんの再発の一因ではないかと示唆している。

「今回の研究を受けて、よりよく計画された研究が急務になるとわれわれは考えている。さらに研究が進めば、より確かなエビデンスにより、今回の研究結果が誤りであることを証明して患者を安心させることができる可能性がある。今回の結果と同様の結果が得られた場合には、乳がんのサーベイランス(経過の監視)に対する注意が高まる可能性がある」と締めくくった。

論説の中で、ボストン大学のMichael R. Cassidy博士とDaniel S. Roh博士は、「テクスチャードタイプのインプラントと未分化大細胞リンパ腫に関連があり、テクスチャードタイプと乳がん再発のリスクの増加に関連があることが示唆されていることを考えると、テクスチャードタイプのインプラントを選択する外科医は、起こりうる結果について乳がん患者に説明すべきである。世界中の多くの再建外科医はすでにテクスチャードタイプのインプラントの使用を完全に中止している」と記述している。

本記事の掲載までにBang博士の都合がつかず取材は実現しなかった。

出典:https://bit.ly/3dkdQbI and https://bit.ly/3jUcp6v JAMA Surgery誌、2020年10月7日オンライン版

翻訳担当者 松長愛美

監修 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター乳腺腫瘍内科)

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