加速乳房部分照射は全乳房照射に近い効果

サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)2018

治療後10年時点の同側乳房内腫瘍再発(IBTR)率で比較した場合、腫瘍摘出術後の加速乳房部分照射(PBI)が全乳房照射(WBI)より劣っているという仮説を否定できないとのNRG(NSABP B-39 / RTOG 0413)試験データが、12月4-8日に開催された2018年サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。

さらに、無再発期間(RFI)の10年時点の推定値が、全乳房照射と比較して加速乳房部分照射では統計学的に有意に劣っていることも開示された。同側乳房内腫瘍再発(IBTR)率とRFIの両方で群間差がわずかであったため、乳房温存術を受ける一定の割合の女性は、全乳房照射の代わりに加速乳房部分照射を受け入れる可能性がある。

「検診および国民の意識の向上により、米国の乳がん患者の大部分は、初期に診断され、毎年10万人以上の女性が乳房温存手術についての治療法の決定に直面しています」と、ミシガン州ポンティアックのMHP Radiation Oncology Institute/21st Century Oncologyの主任研究者のFrank Vicini医師は述べた。「重要なのは、乳がん患者と医療制度が乳房温存手術について最新の情報と選択肢を持つことで、治療へのアクセスの改善、過剰な治療への対抗、治療と医療費の負担の軽減、生活の質(QOL)の改善が可能になります」。

腫瘍摘出術後の全乳房照射では、乳房切除術の場合と比較して同側再発率が同等であると、Vicini氏は説明した。加速乳房部分照射では、乳房全体ではなく腫瘍床を治療し、放射線治療期間を3‐6間から5-8日間に短縮されると、彼は言及した。「本研究の主目的は、乳房温存術を希望する女性の同側乳がん再発コントロールにおいて、加速乳房部分照射が全乳房照射と同等であるかどうかを判断することです」と、彼は述べた。

オハイオ州立大学の共同研究者であるVicini, Julia White医師とその同僚らは、0-3個の陽性腋窩リンパ節があり、腫瘍摘出術を最近受けた乳がん患者をランダム化し、全乳房照射または加速乳房部分照射の治療に割り付けた。 これらの乳がん患者のうち、25%が非浸潤性乳管がん(DCIS)、65%がステージI、10%がステージIIの乳がんであった。 ホルモン受容体陽性がんの患者は81%、閉経後の患者は61%であった。

4,216人の乳がん患者のうち、2,109人が全乳房照射を、2,107人が加速乳房部分照射を受けた。 全乳房照射による治療を、1日1回2 グレイ(Gy)、総線量50Gyの照射に続けて手術部位へのブースト(追加)照射を行う治療、加速乳房部分照射による治療を、1日2回3.4-3.85Gy の照射を三次元外部照射療法または近接照射療法を用いて計10回行う治療と定義した。

本試験の主要評価項目は同側乳房内腫瘍再発(IBTR)率であった。 副次評価項目には、無再発期間、遠隔無再発期間(DDFI)、全生存期間(OS)であった。観察期間の中央値は10.2年であった。 無再発生存期間(DFS)も解析した。

同側乳房内腫瘍再発率は初期事象として161人の女性で観察された。 これらの患者のうち90人が加速乳房部分照射を受け、71人が全乳房照射を受けていた。 再発リスクは2つの治療群間で統計的に有意差がなかったが、ハザード比は治療同等性の統計的基準を満たしていなかったと、Vicini氏は説明した。

治療後10年時点の無IBTR(同側乳房内腫瘍再発)率は、加速乳房部分照射を受けた患者では95.2%、全乳房照射を受けた患者で95.9%であった。 2つの治療群間で10年時点の無再発期間には統計的に有意差があった(加速乳房部分照射で治療した患者で91.9%、全乳房照射で治療した患者で93.4%)。

「10年時点で、2つの治療群間で同側乳房内腫瘍再発率(<1%)および無再発期間(1.5%)の差がわずかであったにもかかわらず、ハザード比が統計的同等性を満たすには不十分であったため、局所的な乳房内腫瘍再発コントロールにおいて、全乳房照射と加速乳房部分照射が同等であるとは断言することができませんでした」と、Vicini氏は述べた。「一方で、私たちはそれが劣っていると主張することもできませんでした」。

重要な点は、2つの治療群間で、遠隔無再発期間、無再発生存期間、または全生存期間において、統計的な有意差が認められなかったことであると、Vicini氏はコメントする。 「これらの結果は、加速乳房部分照射が多くの女性にとって許容範囲の選択肢である可能性があることを示唆しています」と、Vicini氏は述べた。「2つの治療群間で、局所的および局部的な再発コントロールにおいて特定のコホートに利点があるかどうかを判断することを目的に追加解析を進めています」。

グレード3の毒性が、加速乳房部分照射を受けた患者では、全乳房照射を受けた患者と比較してやや高かった(それぞれ9.6%および7.1%)。同様に、グレード4-5の毒性が、加速乳房部分照射を受けた患者では、全乳房照射を受けた患者と比較してわずかに高かった(それぞれ0.5%および0.3%)。

「放射線送達は技師への依存度が高く、放射線照射の質および放射線送達の技術が毒性の結果に及ぼす影響を判断するには、今後の解析結果を待つことが重要となります」と、Vicini氏は述べた。

試験では複数の方法の加速乳房部分照射を使用したが、個々の臨床シナリオでどの加速乳房部分照射技術が最適かを判断するには検出力が不足している点が本研究の限界であったと、Vicini氏は言及した。

本研究は米国国立がん研究所の資金支援を受けた。Vicini氏はImpediMed社のリサーチアドバイザーである。

翻訳担当者 会津麻美

監修 下村明彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

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