2011/07/12号◆FDA最新情報「乳癌に対するベバシズマブの承認取り消しを諮問委員会が勧告」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年7月12日号(Volume 8 / Number 14)

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◇◆◇ FDA最新情報 ◇◆◇

乳癌に対するベバシズマブの承認取り消しを諮問委員会が勧告

米国食品医薬品局(FDA)の諮問機関である専門家委員会は、転移性乳癌治療に対するベバシズマブ(アバスチン)の迅速承認を取り消す勧告を全会一致で採択した。FDA局長のDr. Margaret A. Hamburg氏は、パブリックコメントの募集期間終了後に、委員会の勧告を実施するかどうかの最終決定を下すことになる。(パブリックコメントは、電子形式または書面にて7月28日までRegulations.govで受け付ける。)

6月29日、FDA医薬品評価研究センターの抗腫瘍薬諮問委員会(ODAC)は承認取り消しの勧告を提言した。3回の投票を経て、ODACとFDAは、HER2陰性転移性乳癌の一次治療として化学療法との併用でのベバシズマブ使用をこれ以上承認すべきでないということで合意した。

2008年2月、FDAは1件の第3相臨床試験結果に基づいてこの適応を迅速承認した。ただし、迅速承認では検証のための追加試験で肯定的な結果が得られることが条件である。2010年7月、2件の追加試験の結果を精査した上で、ODACはベバシズマブの転移性乳癌への適応に反対する勧告を12対1で可決した。(「FDA諮問委員会は、転移性乳癌に対するベバシズマブの使用を推奨しない」を参照。)

ベバシズマブの製造元である、Roche社傘下のGenentech社には公聴会が認められた。メリーランド州シルバースプリングで2日間にわたって開催された公聴会では、同社の代表に加えて、患者、乳癌患者やアドボケートらが公述を行った。

ODACの3回の投票のうち最初の投票では、進行中の複数の試験が患者に対するベバシズマブの臨床的有用性を実証していないことについて、6対0でODAC委員とFDA当局者の意見が一致した。また、現在有効とされるエビデンスではこの適応でのベバシズマブの安全性が示されていない、すなわち、乳癌患者のリスクのほうが利益を上回っていることでも意見が一致した。(化学療法との併用でベバシズマブを投与される癌患者では、死に至る可能性のある重大な副作用のリスクが増大する。)

最後にODACは、スポンサーであるGenentech社が臨床的有用性の検証を目的とした別の試験を実施する間、転移性乳癌へのベバシズマブの継続的な承認に反対する勧告を行った。

ベバシズマブは、進行した大腸癌、肺癌、腎臓癌、脳腫瘍など他の癌腫の治療には承認されている。FDA局長の決定が下るまで、依然としてベバシズマブはパクリタキセルとの併用でHER2陰性転移性乳癌女性に適応のある承認薬である。

追加情報:アバスチンについてのQ&A

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月橋 純子 訳
原 文堅(乳腺科/四国がんセンター) 監修 
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