【SABCS25】一部のHR陰性乳がん患者で乳房MRIを省略できる可能性
術前MRIは5年再発率に影響なし
ステージ1または2のホルモン受容体(HR)陰性乳がん患者において、がんの進行度を判定するために診断用マンモグラフィに加え術前乳房磁気共鳴画像法(MRI)を実施した場合と実施しなかった場合とで、5年局所再発率は同等であった。この第3相Alliance A011104/ ACRIN 6694臨床試験結果は、2025年12月9日から12日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。
この研究の主研究者であるIsabelle Bedrosian医師(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、外科腫瘍学者・乳房外科腫瘍学教授)によれば、乳房 MRI は、マンモグラフィでは発見できない疾患を発見できることから、乳がんの診断検査の一部として一般的に採用されている。
しかし同医師は、MRI検査を含めると検査が追加されることになり、手術の遅延や患者の経済的負担増を招くことが多いと指摘する。「MRI使用による患者転帰の明らかな改善が確認できれば、こうした費用や遅延は正当化されるかもしれないが、腫瘍学的転帰への影響は十分に研究されていない」。
「MRIで病変を追加して検出し、外科的に切除することが、疾患再発リスクを低減する重要な方法であるという前提が長年、根底にあった」と彼女は付け加えた。「我々がこの前提を検証するために設計した臨床試験では、マンモグラフィでは検出されなかった病変領域を検出して切除することが、長期的な治療成績の改善につながるかどうかを明らかにすることを目的とした」。
本試験には、新たにステージ1または2と診断されたHR陰性乳がん患者319人が登録された。対象は乳房部分切除術の適応がある患者で、生殖細胞系列BRCA1/2変異、両側性乳がん、既往の乳がん歴のいずれもない患者であった。HR陰性乳がん患者はHR陽性乳がん患者と比較して疾患再発リスクが高いため、本研究ではHR陰性乳がん患者を対象としたとBedrosian医師は説明した。
患者全員が試験登録前に超音波検査の有無にかかわらず診断用マンモグラフィを受けていた。登録時、患者は乳房MRIによる追加画像検査を受ける群(MRI群)と追加画像検査を受けない群(非MRI群)に無作為に割り付けられた。乳房部分切除手術と補助放射線療法を受けた女性の割合は両群で同程度であった。
中央値61.1カ月の追跡期間後、MRI群の161人中93.2%、非MRI群の158人中95.7%が局所再発を認めず、この差は統計学的に有意ではなかった。
「試験の両群において局所再発率は非常に低く、MRI検査を追加してもさらに低下することはなかった」とBedrosian医師は述べた。
乳房MRIは、5年遠隔無再発生存率(MRI群94.2%対非MRI群94.4%)および全生存率(MRI群92.9%対非MRI群91.4%)にも有意な影響を与えなかった。
術前化学療法を受けた56人の患者群において、MRI群の病理学的完全奏効率は数値的には低かった(36%対52%)。しかし、この差は統計学的に有意ではなかった。Bedrosian医師は、この患者群の人数が非常に少ないため、これらのデータは予備的とみなすべきであると指摘した。
「我々の試験結果は、術前乳房MRIによる病期分類を受けた患者と受けなかった患者とで、腫瘍学的転帰に改善が認められないことを示している」とBedrosian医師はまとめた。さらに、この結果はCOMICE臨床試験のデータに基づくものであり、その試験では、乳房MRIがその後の追加手術率を低下させなかったことを実証しているとも述べた。
「我々の結果はさらに、乳がん患者の診断検査においては、術前MRIを使用して手術治療の指針とすることに臨床的有用性がないことを示唆している」とBedrosian医師は述べた。「この状況下でのMRIのルーチン使用は正当化されないという結論に至った」。
術前乳房MRIに有益性が認められない理由として、この患者集団においてマンモグラフィで検出可能な病変以外に多くの追加病変を発見できなかったことや、これらの追加病変を特定、切除しても疾患再発率にほとんど影響を与えなかったことが考えられると同医師は説明した。
「おそらく両方の理由が組み合わさった結果だろう」と彼女は述べ、乳房MRIが腫瘍学的転帰に影響を与えなかった理由をより深く理解するため、乳房MRIが試験対象集団において追加病変をどの程度の頻度で同定したかを検証する解析が継続中であると付け加えた。
本研究の限界として、試験開始時点で患者の93.4%が臨床的にリンパ節陰性の乳がんであった点が挙げられる。Bedrosian医師は、リンパ節陰性疾患の割合が高いことが両群で観察された局所再発率の低さを部分的に説明し得ると述べたが、乳房MRI検査の有無にかかわらず局所再発率が同程度であったという知見については、この要因では説明し難いと指摘した。
Bedrosian医師が指摘したもう一つの限界は、試験対象集団が高齢に偏っており、研究登録時の平均年齢が58.9歳であった点である。MRIのメリットは50歳未満の患者でより大きくなると考えられている。というのも、50歳未満の女性は通常、乳房組織が高密度であり、マンモグラフィの感度が制限される可能性があるためである。しかしBedrosian医師によれば、50歳未満の参加者を対象とした解析では、この患者群でも同様にMRIが有益とならない可能性が示唆された。
本研究は米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立がん研究所(NCI)の支援を受けた。Bedrosian医師は利益相反がないことを表明する。
- 監修 小坂泰二郎(乳腺外科/JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター)
- 原文を見る
- 原文掲載日 2025/12/11
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
乳がんに関連する記事
【SABCS25】一部の乳がん患者でセンチネルリンパ節生検を省略できる可能性
2025年12月29日
【SABCS25】ホルモン抵抗性進行乳がん、サシツズマブによる無増悪生存は標準治療と同等
2025年12月20日
【SABCS25】モバイル健康ツールで若年乳がんサバイバーの生活の質向上か
2025年12月29日
【SABCS25】マルチモーダルAIモデルは早期乳がんの再発リスク層別化を改善する可能性
2025年12月16日

