【SABCS25】HER2+転移乳がんの一次維持療法にツカチニブ追加で無増悪生存が改善
脳転移を有する患者などすべてのグループで有効性が認められた
HER2陽性転移乳がん患者において、一次治療後に行われるトラスツズマブ(販売名:ハーセプチン)およびペルツズマブ(販売名:パージェタ)による維持療法にtucatinib[ツカチニブ](販売名:Tukysa)を追加することで、病勢進行が遅延し、化学療法を行わない期間が延長される可能性があることが、2025年12月9日から12日にかけて開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された第3相臨床試験HER2CLIMB-05の結果から示された。
本研究の結果は、Journal of Clinical Oncology誌にも同時掲載された。
HER2陽性乳がんは全乳がん症例の約17%を占めており、転移のある患者では5年生存率が50%未満である。2012年以降、HER2陽性転移乳がんの一次治療はほぼ変わらず、化学療法の後に抗HER2モノクローナル抗体2剤による維持療法を行う治療が標準であると、米テネシー州ナッシュビルにあるサラ・キャノン研究所(SCRI)の乳がん研究ディレクターであるErika Hamilton医師は述べた。現在、多くの患者は治療開始から2年以内に病勢進行を経験し、化学療法へ移行せざるを得ない状況にある。「本研究の結果は、標準治療にツカチニブを追加することが、HER2陽性転移乳がん患者さんにとって、より強化された一次維持療法の選択肢となり得ることを示しています。これにより、病勢進行までの期間、そして化学療法を使わずに済む期間を延ばす機会が得られます」と、同研究を発表したHamilton医師は述べる。
Hamilton氏によると、選択的HER2阻害薬であるツカチニブは、HER2CLIMB試験において、脳転移を有する患者を含む後期治療ラインの患者に対しても有効性が示された。これを受け、米国食品医薬品局(FDA)は2020年、少なくとも1つ以上の治療歴を有する切除不能な局所進行または転移HER2陽性乳がん患者(脳転移を有する患者を含む)に対する治療として、本薬を承認した。
「HER2CLIMB-05試験は、化学療法を含む導入療法を完了し、病勢進行を認めなかったHER2陽性転移乳がん患者を対象に、一次維持療法の設定でツカチニブの有効性を検討するために開始されました」と同氏は述べた。「また、ツカチニブによる細胞内からのHER2阻害と、モノクローナル抗体2剤による細胞外からのHER2二重阻害を組み合わせることで、患者転帰が改善される可能性があるかどうかも評価したいと考えました」と付け加えた。
本試験には、トラスツズマブおよびペルツズマブを併用した4~8コースの導入化学療法を完了し、病勢進行を認めなかったHER2陽性進行乳がん患者654人が登録された。患者は無作為に、トラスツズマブおよびペルツズマブの継続投与に加えて、ツカチニブまたはプラセボを投与される群に割り付けられた。
追跡期間中央値23カ月時点で、ツカチニブを投与された患者では無増悪生存期間(PFS)が2年を超え、対照群と比べて8.6カ月の延長が認められた。ホルモン受容体(HR)陰性患者では、病勢進行または死亡のリスクが44.6%低下し、PFS中央値は12.3カ月延長した。一方、HR陽性患者では、病勢進行または死亡のリスクが27.5%低下し、PFS中央値は6.9カ月延長した。
ベースライン時に脳転移を有していた患者(全体の12.2%)では、ツカチニブにより中枢神経PFS(脳転移の進行またはあらゆる原因による死亡までの期間)中央値がほぼ2倍となり、4.3カ月から8.5カ月へと延長した。「中枢神経系PFSは副次評価項目であり、この結果は予備的なものです」と同氏は注意を促し、解析時点でツカチニブ群の54%の患者が試験治療を継続していたことを付け加えた。
これらの結果は、ツカチニブが多様な患者グループにおいて幅広い有益性をもたらす可能性を示唆していると、同氏は述べる。また、病勢進行を待つのではなく、維持療法の段階でHER2標的治療を強化する重要性を強調した。「維持療法期間を延長することで、患者さんは病勢をコントロールしながら、化学療法を行わずに済む期間を延ばすことができます」と述べ、さらに、HR陽性HER2陽性転移乳がんにおいて、パルボシクリブ(販売名:イブランス)を治療に組み込むことでPFSが15カ月延長したことを示したPATINA試験の最近のデータと併せ、HER2CLIMB-05試験の結果は、この患者集団におけるより個別化された一次維持療法戦略への転換を支持するものであると見解を示した。
本研究の限界として、導入療法後に病勢進行を認めなかった患者のみを登録している点があり、選択バイアスが生じている可能性があると、Hamilton氏は説明した。また、脳画像検査の頻度の違いや、全身病勢進行後に定期的な画像評価が中止されたことが、中枢神経系PFS評価の正確性に影響を与えた可能性もあるとした。
*本研究の情報開示については、原文を参照。
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