アナストロゾール対タモキシフェン、乳がんDCISでは再発率に有意差なし(SABCS2015)

アナストロゾール対タモキシフェン、乳がんDCISでは再発率に有意差なし(SABCS2015)

副作用プロファイルでは有意差がみられた

12月8~12日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム2015でJack Cuzick医学博士より発表されたIBIS-II DCIS第3相臨床試験の結果によると、乳管上皮内がん(DCIS:非浸潤性乳管がん)の閉経後女性にとって、手術後の5年間タモキシフェン、またはアロマターゼ阻害剤であるアナストロゾールの投与により乳がん再発による転帰は類似していたが、両群の女性患者たちには異なる副作用が発現した。

本研究は、Lancet誌で同時に発表されている。

「IBIS-II DCIS試験は、閉経後ホルモン受容体陽性、浸潤性乳がん女性の再発を予防するためにアロマターゼ阻害剤がタモキシフェンより有効であったことを示したATAC試験および他のアロマターゼ阻害剤の試験からの後続試験です」。ロンドン大学クイーン・メアリー、ウルフソン予防医学研究所所長で、教授であるJack Cuzick医学博士は述べた。「DCISに対するアロマターゼ阻害剤の影響に関したデータ不足を考えると、DCISの女性患者を対象に研究を行うのは自然なステップでした」。

「本試験でわれわれは、アナストロゾールを投与された群の方がわずかに良好な転帰でしたが、総じてアナストロゾールおよびタモキシフェン両群の女性患者に同等の効果が得られることを見出しました。副作用プロファイルは2剤で大きく異なっていましたが、患者には同一のコンプライアンスがあり、副作用のバランスが取れていました」とCuzick医学博士は補足した。

「アナストロゾールはエストロゲン受容体陽性のDCIS患者を治療するうえでもう一つの選択肢となります。どちらの薬を選択するかは有効性より忍容性や副作用に関連した併存する症状次第となる可能性があります」とCuzick医学博士は述べた。

本多施設ランダム化プラセボ対照試験では、局所的に切除したホルモン受容体陽性DCISを有する閉経後の女性2,980人が組み入れられ、1,471人をアナストロゾール(1 mg/日)群に、1,509人をタモキシフェン(20 mg/日)群に無作為に割り付けられた。また全女性患者は副作用プロファイルの評価に信頼性があったことを確認するため、投与しない群には、試験薬のようなプラセボ薬が投与された、とCuzick医学博士は説明した。本試験の主要評価項目は、乳がん再発率の評価であった。

中央値7.2年の追跡調査後、144人の参加者が乳がんを発現し、69人が死亡、そのうち4人の死因が乳がんであった。アナストロゾールを投与した女性患者では、タモキシフェンを投与した患者に比べ、DCISまたは浸潤性がんの再発率が11%減少したが、有意差には至らなかった。浸潤性がんの再発を除くサブグループで有意差はなかった。アナストロゾールを投与された女性患者はHER2陰性の浸潤性がんが再発する可能性が低い傾向にあり、一方でタモキシフェンを投与された女性患者はHER2陽性の浸潤性がんが再発する可能性が低い傾向がみられた。

2剤による副作用

アナストロゾールを投与した女性患者は、タモキシフェンを投与した女性患者と比べて、子宮内膜がん、卵巣がん、および皮膚がんの発現が少なかった。しかし、アナストロゾールを投与した患者では脳卒中がより多くみられた。データは死亡率の差異を評価するには不十分であった。

タモキシフェンを投与した女性患者には、アナストロゾールを投与した患者に比べ、より重大な血栓塞栓症およびほてり、腟出血、分泌物などの婦人科的問題があった。一方、アナストロゾールを投与した女性患者には、骨折、筋骨格系問題、腟乾燥がより多くみられた。

「われわれは本試験に参加した患者の追跡調査を継続しています」とCuzick医学博士は述べた。「がんのベースラインにおける分子的特徴および治療中にがんが発現した患者さんの解析は進行中です」。

本試験は、キャンサーリサーチUK、オーストラリア国立保健医療研究委員会、Breast Cancer Research Fundおよびアストラゼネカ社から助成を受けた。Cuzick医学博士はアストラゼネカ社から研究助成金を受けており、同社の来賓講演者である。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 原 文堅(乳がん/四国がんセンター)

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