血液検体の分析を行うことにより、ESR1遺伝子変異が広くみられ、また全生存期間の不良と関連することが示される(サンアントニオ乳がんシンポジウム2015)

血液検体の分析を行うことにより、ESR1遺伝子変異が広くみられ、また全生存期間の不良と関連することが示される(サンアントニオ乳がんシンポジウム2015)

変異の違いによりエベロリムスへの反応が予測可能に

エストロゲン受容体(ER)陽性転移性乳がんでは、患者の血液検体から得た無細胞DNAにて検出されたエストロゲン受容体1(ESR1)遺伝子のD538GおよびY537S変異の両方またはいずれかを有する患者は、全生存期間中央値が有意に不良であることが、2015年サンアントニオ乳がんシンポジウム(12月8~12日)で発表されたデータにより明らかになった。

「ER陽性転移性乳がん患者は一般的にエストロゲン受容体を標的とする治療を受けていますが、腫瘍の薬剤への反応は実にさまざまであるため、転帰もさまざまです」とニューヨークのスローンケタリング記念がんセンターの乳腺腫瘍医Sarat Chandarlapaty医学博士は述べた。「われわれの目標はエストロゲン受容体そのものの変化でこれらの差異を説明できるかどうかを検討することでした。特に知りたかったのは、エストロゲン受容体の変異が進行性乳がん患者によくみられるのか、そして、それらが転帰に影響するのかということでした」

「簡単な血液検査でエストロゲン受容体のD538GおよびY537S変異を検出し、これらの変異が進行性ER陽性乳がん患者でこれまでに認識されていたよりも多くみられ、変異を有する患者は現在用いられている治療にも反応せず、変異のない患者よりも早期に乳がんで亡くなることがわかりました」とChandarlapaty氏は述べた。「エベロリムスに対する反応の差異にこれら2つの変異が影響する可能性がデータで示唆されていますが、このことを確認するにはさらに研究が必要です」
どのがんがどの治療に最も奏効するかを判別することが、臨床および研究での試みを導く上での鍵となり、今後の乳がん治療をより正確で効果的なものにしていくでしょう」

以前発表された第3相BOLERO-2試験の結果では、アロマターゼ阻害剤による治療後に進行したER陽性局所進行性または転移性乳がんの閉経後女性において、標準ホルモン治療薬のエキセメスタンにエベロリムスを上乗せすると転帰が改善したことから、FDAはエベロリムスをこの適応で2012年7月に承認した。

Chandarlapaty氏らは、この解析でBOLERO-2試験に登録された724人の患者のうち541人の血液検体を評価した。83人の検体からESR1のD538G変異を、42人からY537S変異を、30人から両方の変異を検出した。

D538G変異もY537S変異もない患者での全生存期間中央値は32.1カ月、D538G変異のみを有する患者で26カ月、Y537S変異のみを有する患者で20カ月、両変異を有する患者では15.2カ月であった。探索的解析により、エキセメスタンにエベロリムスを上乗せすることで、ESR1の変異がない患者およびD538G変異のみを有する患者で無増悪生存期間が2倍以上になることがわかった。しかし、この併用療法では、Y537S変異のみを有する患者の無増悪生存期間を延長しないとみられた。

「これらのデータはESR1のD538GおよびY537S変異が、アロマターゼ阻害剤での治療後に進行した進行性ER陽性乳がん患者に多くみられ、転帰不良と関連していることを明確に示しています。しかし、Y537S変異を有する患者数は少ないため、この患者集団にエベロリムスを適応としないことを検討するにはさらなる研究が必要です」とChandarlapaty氏は述べた。

本研究はNovartis社およびスローンケタリング記念がんセンター・転移研究センターの支援を受けた。Chandarlapaty氏は中外製薬、Foresite CapitalおよびOncotheyreonからコンサルティング料を受けており、Novartis社の受託研究を行っている。

翻訳担当者 吉田加奈子

監修 北丸綾子(分子生物学/理学博士)

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