米FDAがER+HER2-ESR1変異陽性の進行/転移乳がんにイムルネストラントを承認
2025年9月25日、米国食品医薬品局(FDA)は、少なくとも1種類の内分泌療法後に病勢進行したエストロゲン受容体(ER)陽性、ヒト上皮成長因子2(HER2)陰性、エストロゲン受容体1(ESR1)変異陽性の進行または転移性乳がんの成人患者を対象に、エストロゲン受容体拮抗薬イムルネストラント[Imlunestrant](販売名:インルリヨ[Inluriyo]、Eli Lilly and Company社)を承認した。
FDAはまた、イムルネストラントの投与対象となるESR1変異陽性乳がん患者を特定するためのコンパニオン診断装置としてGuardant360 CDxアッセイを承認した。
Inluriyoの詳細な処方情報はこちらに掲載される。
有効性と安全性
有効性は、ランダム化、非盲検、実薬対照、多施設共同試験であるEMBER-3(NCT04975308)で評価された。この試験には、アロマターゼ阻害薬単独またはCDK4/6阻害薬との併用による治療歴のあるER陽性HER2陰性局所進行または転移性乳がん患者874人が登録された。PARP阻害薬の投与対象となる患者は除外された。
イムルネストラント投与群、治験担当医師選択による内分泌療法(フルベストラントまたはエキセメスタン)群、または追加の試験的併用療法群に、患者を1:1:1の割合でランダムに割り付けた。ランダム化は、CDK4/6阻害薬の投与歴、内臓転移の有無、および地理的地域によって層別化された。ESR1遺伝子変異の状態は、Guardant360 CDxアッセイを用いた血中循環腫瘍デオキシリボ核酸(ctDNA)解析によって決定され、リガンド結合ドメインにおける特定のESR1遺伝子変異に限定された。
主要な有効性評価項目は、治験担当医師評価による無増悪生存期間(PFS)(RECIST v1.1)であり、ESR1変異陽性患者において、イムルネストラントと治験担当医師選択による内分泌療法を比較した。その他の有効性評価項目は、全生存期間(OS)および客観的奏効率(ORR)であった。ESR1変異陽性患者集団(n=256)において、イムルネストラントと治験担当医師選択による内分泌療法を比較したところ、治験担当医師評価によるPFSに統計的に有意な差が認められた。PFS中央値は、イムルネストラント群で5.5カ月(95%信頼区間:3.9~7.4)、治験担当医師選択による内分泌療法群で3.8カ月(95%信頼区間:3.7~5.5)であった(ハザード比0.62[95%信頼区間:0.46~0.82]、p値0.0008)。ORRは、イムルネストラント群で14.3%、治験担当医師選択群で7.7%であった。PFS解析時点ではOSデータは未完成であり、ESR1変異陽性患者群では31%が死亡した。
臨床検査値の異常を含む主な有害事象(10%以上)は、ヘモグロビンの減少、筋骨格痛、カルシウムの減少、好中球の減少、ASTの上昇、疲労、下痢、ALTの上昇、トリグリセリドの増加、吐き気、血小板の減少、便秘、コレステロールの上昇、および腹痛であった。
推奨用量
イムルネストラントの推奨用量は、経口投与での1日1回400 mgであり(食前2時間以上、または食後1時間以上の空腹時に投与)、病勢が進行するまで、または許容できない毒性が現れるまで継続する。
- 監修 下村昭彦(腫瘍内科医/国立国際医療センター)
- 記事担当者 仲里芳子
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- 原文掲載日 2025/09/25
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