運動は乳癌患者のホルモン療法による関節痛を有意に軽減する

運動は乳癌患者のホルモン療法による関節痛を有意に軽減する

キャンサーコンサルタンツ

定期的な運動は乳癌治療に使用されるアロマターゼ阻害薬(AI)に関連する関節痛の軽減に役立つという研究結果が、今週のJournal of Clinical Oncology誌に掲載された[1]。

アロマターゼ阻害薬はエストロゲン受容体陽性の早期および再発後の乳癌の治療に広く使用されており、また、ハイリスク者の乳癌に罹患する可能性を減少させる[2]。

アロマターゼ阻害薬は閉経後女性におけるアンドロゲンからエストロゲンへの変換を阻害し、エストロゲンの量を減少させる。近年、3種[レトロゾール(フェマーラ)、アナストロゾール(アリミデックス)、およびエキセメスタン(アロマシン)]の抗アロマターゼ薬が閉経後女性の乳癌治療用に承認された[3,4,5]。レトロゾールおよびアナストロゾールは非ステロイド系のアロマターゼ阻害薬であり、アロマターゼと可逆的に結合する。エキセメスタンはステロイド系のアロマターゼ阻害薬であり、アロマターゼと不可逆的に結合する。

エキセメスタン等のアロマターゼ阻害薬は乳癌に対して有用性があるが、これらの薬剤は骨に有害な影響を及ぼすことも報告されている。つまり、健康な閉経後女性にエキセメスタンを使用すると、骨量減少が進み、関節痛を訴える女性が多いことが証明されている。

オンラインで公表された今回の研究は、ニューヘイブンのエール公衆衛生大学院の研究者らによる臨床試験であり、関節痛を訴えるAI投与乳癌患者に対して、運動プログラムの開始、または通常の活動のいずれかを指示した。

この運動プログラムは1週間当たり150分のエアロビクスおよび1週間当たり2回の管理された筋力トレーニングからなる。

「最も悪い関節痛のスコア」は、運動群で29%減少し、通常治療群では実質増加した。研究者らは「以前は活動的でなかった乳癌サバイバーでは、運動によってAIによる関節痛が改善した」と報告した。この試験は、AI治療を必要とし、関節痛に悩む多くの女性に解決策を提供するとともに、治療を継続しながら適度な運動を通してより良い健康を楽しむための方法を提供するものである。

参考文献:
1.Irwin M, Cartmel B, Gross C, et al. Randomized Exercise Trial of Aromatase Inhibitor–Induced Arthralgia in Breast Cancer Survivors. J of Clin Oncol. December 10, 2014, 32 (35).
2.Goss PE, Ingle JN, Ales-Martinez JE et al. Exemestane for breast-cancer prevention in postmenopausal women. New England Journal of Medicine. 2011;364:2381-91.
3.Food and Drug Administration. FDA Oncology Tools Approval Summary for Femara® for Treatment of advanced breast cancer in postmenopausal women. Accessed March 29, 2002.
4.Food and Drug Administration. FDA Oncology Tools Approval Summary for Arimidex® for Treatment of advanced breast cancer in postmenopausal women with disease progression following Nolvadex® therapy. Accessed March 29, 2002.
5.Food and Drug Administration. FDA Oncology Tools Approval Summary for Aromasin® for Treatment of advance breast cancer in postmenopausal women whose disease has progressed following Nolvadex® therapy. Accessed March 29, 2002.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 後藤由紀子

監修 原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

【AACR2025】 オラパリブ+ペムブロリズマブ併用は、分子マッチングによる臓器横断的試験で有望な結果の画像

【AACR2025】 オラパリブ+ペムブロリズマブ併用は、分子マッチングによる臓器横断的試験で有望な結果

● オラパリブ(商品名:リムパーザ)とペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の併用は、複数のがん種、特にBRCA1/2遺伝子変異(乳がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がんなどの発症リス...
【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ②の画像

【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ②

5月30日-6月3日イリノイ州シカゴおよびオンラインで開催された2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会では、がんのさまざまな部位にわたる幅広いテーマについて探究した44件の研究...
【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ①の画像

【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ①

ASCOの見解(引用)5月30日-6月3日イリノイ州シカゴおよびオンラインで開催された2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会では、がんのさまざまな部位にわたる幅広いテー...
【ASCO2025】トラスツズマブ デルクステカン+ペルツズマブ併用はHER2陽性進行乳がんの一部でがん増殖を抑制の画像

【ASCO2025】トラスツズマブ デルクステカン+ペルツズマブ併用はHER2陽性進行乳がんの一部でがん増殖を抑制

ASCOの見解(引用)「Destiny-Breast09試験で得た知見は、HER-2陽性転移性乳がんに対する新たな一次標準治療法に相当するものです。治療期間が年単位で評価できる...