OncoLog 2014年5月号◆Dialog「マンモグラフィ検診は乳癌に関連する死亡を減少させる」

MDアンダーソン OncoLog 2014年5月号(Volume 59 / Number 5)

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Dialog:マンモグラフィ検診は乳癌に関連する死亡を減少させる

カナダで行われた25年間にわたる乳癌検診の研究(Canadian National Breast Screening Study, CNBSS)結果が議論を呼んでいる。この長期試験結果で、40-59歳の女性に診察や一般的なケアをした場合と比較して、毎年1回のマンモグラフィによる乳癌検診は死亡率を低下させないことが示された。試験担当者らは、マンモグラフィ検診の理論的根拠について、「政策立案者らは早急に再評価するべきである」という結論を出した。この結論は、マンモグラフィ検診が乳癌に関連する死亡を減少させることを示した多くの相反する研究もある。

このCNBSSの結果は、他のマンモグラフィの臨床試験結果だけでなく、マンモグラフィ検診が39-69歳の女性の乳癌関連の死亡を有意に減らすことを報告した、米国予防医学専門委員会(US Preventive Services Task Force, USPSTF)のメタ解析結果にも矛盾している。

CNBSSは1990年代初めにまでさかのぼり批評を受けている。最も重要な批評の一つは、対象患者が試験の組み入れ時ではなく、診察後に無作為に介入群(マンモグラフィ検診あり)と対照群(マンモグラフィ検診なし)に分けられていたことである。介入群または対照群に患者を振り分ける前に診察結果の情報を得ていたことは、無作為化の過程に影響を及ぼした可能性が考えられる。実際CNBSSでは、4個以上のリンパ節転移を伴う乳癌の40-49歳女性の数は、マンモグラフィ群では対照群よりも380%多かった。そのような非対称な組み入れは偶然に起こったとは考えにくく、乳癌関連の死亡におけるマンモグラフィの影響を最小限に、あるいは除外したであろうと考えられる。

さらに、画像の撮影や解釈に関してCNBSSへの懸念が生じている。ある外部調査によると、臨床試験の最初の4年間に撮影されたマンモグラフィは、半分以上が不良または容認できないものであると判断された。しかし画像の質はその試験期間中、最後の2年間で向上した。また、検査技師は撮影時患者に適切な姿勢を取らせることを教わっておらず、放射線科医師はマンモグラフィ画像を解釈するための十分な経験をもっていなかった。

CNBSSについての懸案事項により、マンモグラフィ使用に関するCNBSSの提案は説得力を失い、役に立たなくなっている。現時点での乳癌を早期検出する最良の手段は、依然マンモグラフィ検診である。

— Therese Bevers医師、Department of Clinical Cancer Prevention教授

References

American College of Radiology and Society of Breast Imaging. BMJ article on breast cancer screening effectiveness: incredibly flawed and misleading [PDF]. Society of Breast Imaging Web site. Posted February 11, 2014. Accessed April 16, 2014.

Miller AB, Wall C, Baines CJ, et al. Twenty five year follow-up for breast cancer incidence and mortality of the Canadian National Breast Screening Study: randomised screening trial. Br Med J. 2014;348:g366.

Nelson HD, Tyne K, Naik A, et al. Screening for breast cancer: an update for the U.S. Preventive Services Task Force. Ann Intern Med. 2009;151:727–737.

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翻訳担当者 中村奈緒美

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院)

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