リンパ節転移が1個から3個の乳癌患者にも乳房切除後の放射線治療が有効

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リンパ節転移が数個の乳癌患者に対して、乳房切除後に放射線治療を実施すると、乳癌の再発率または死亡率が低下するという試験結果が、Lancet誌に掲載された

乳房切除後の放射線治療は、リンパ節転移陽性患者における乳癌の再発リスクおよび死亡リスクを低下させることが明らかになってきたが、リンパ節転移数が1~3個のみの早期乳癌患者に対する有用性は確信がなかった。

この問題を検討するため、研究者らは1964年から1986年の間に行われた22件のランダム化臨床試験に参加した女性患者8,135人から得たデータをメタ解析した。このうち、研究者らは乳房切除および腋窩リンパ節郭清を受けた後に、胸壁とその周辺部に放射線治療を実施する群と実施しない群にランダムに割り付けられた3,786人の患者を同定した。患者は、リンパ節転移がみられない群、リンパ節転移数が1~3個の群、リンパ節転移数が4個以上の群に分類された。

リンパ節転移がみられない患者700人において、放射線治療は乳癌の再発率または死亡率に大きな影響を及ぼさなかったが、他の2群では重要な役割を果たした。

リンパ節転移数が1~3個の患者1,314人では、放射線治療によって乳癌再発率が32%低下し、乳癌死亡率が20%低下した。これらの患者に放射線治療を実施することにより、10年後には100人中約12人の割合で乳癌再発が減少し、20年後には100人中約8人の割合で乳癌死亡が減少した。リンパ節転移数が1個、2個または3個であろうと、各群で有用性に差はみられなかった。さらに、患者がこの他に化学療法やホルモン療法を受けているか否かに関わらず、有用性が示された。

当然ながら、放射線治療はリンパ節転移数が4個以上の患者1,772人にも有用性を示し、乳癌再発率が21%低下し、乳癌死亡率が13%低下した。これらの患者に放射線治療を実施することにより、10年後には100人中約9人の割合で乳癌再発が減少し、20年後には100人中約9人の割合で乳癌死亡が減少した。

乳房切除後の放射線治療は、リンパ節転移数が4個以上の患者の標準治療として既に承認されており、今回の試験結果から、リンパ節転移数が1~3個の患者にも有用性をもたらすことが裏づけられた。

研究者らは、患者のリンパ節転移数に関係なく乳房切除後の放射線治療によって乳癌の再発率および死亡率が低下すると結論づけた。

参考文献
EBCTCG (Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group). Effect of radiotherapy after mastectomy and axillary surgery on 10-year recurrence and 20-year breast cancer mortality: meta-analysis of individual patient data for 8135 women in 22 randomised trials. The Lancet. Published early online March 19, 2014. doi:10.1016/S0140-6736(14)60488-8


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翻訳担当者 寺本瑞樹

監修 中村光宏 (医学放射線/京都大学大学院医学研究科)

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