乳房切除・再建後の早期乳がんに対する短期放射線療法の安全性

ダナファーバーがん研究所

がん関連の転帰および身体的な転帰は長期療法と短期療法で同等であったが、短期療法の方が生活と経済への負担が少ないことが患者調査によって報告された。

乳房切除術および乳房再建術後の短期放射線療法は、乳がん再発予防効果や身体的な副作用に関してはこれまでと同等であるが、患者の生活上の支障や経済的負担は大幅に軽減することが、ダナファーバーがん研究所ブリガムがんセンターの研究者により明らかになった。

多施設共同ランダム化臨床試験であるFABREC試験(Hypofractionated versus Conventionally Fractionated Postmastectomy Radiation Therapy After Implant-Based Reconstruction)の結果は、2023年10月1日にカリフォルニア州サンディエゴで開催された米国放射線腫瘍学会(ASTRO)年次総会で発表され、ニュースブリーフィングで紹介された。

寡分割放射線療法は、従来の放射線療法が比較的低線量の放射線を5週間かけて照射するのに対し、1回当たりの照射量が多く3週間で終了する。本試験は、乳房切除と即時再建を行った乳がん患者において、3週間コースの放射線療法と5週間コースの放射線療法を比較したはじめてのランダム化試験である。

「今回の試験結果により、寡分割療法は、有効性を損なったり副作用を増加させたりすることなく、この設定の下で安全に使用できることが示唆されました」と、ダナファーバー・ブリガムがんセンターの放射線腫瘍医である統括著者Rinaa S. Punglia医師、MPHは言う。「放射線治療の必要期間を3週間に短縮することは、患者の生活の質を大きく改善することになるでしょう」。

乳がん患者の多くは、がん再発のリスクを軽減するために乳房切除術を選択する。こうした患者の3人に1人に対し、再発リスクをさらに軽減するために乳房切除後の放射線療法が推奨される。

乳房切除術と同時に、インプラントを用いた乳房再建を選択する女性が増加傾向にある。しかし、放射線療法は、乳房再建に伴う合併症のリスク(感染症のリスクや乳房周囲の瘢痕組織形成により硬さや非対称性が生じる美容的リスクなど)を高めてしまう。

「放射線療法は、乳房切除術および再建術を受けた患者に美容上望ましくない変化をもたらす可能性があることが分かっています」と、筆頭著者でダナファーバー・ブリガムがんセンターの放射線腫瘍医、Julia S. Wong医師は言う。「この試験では、治療の有効性を犠牲にすることなく、QOLと整容性を向上させる道を探りました」。

乳房切除術における放射線療法の短期コースと長期コースとを比較するために、研究者らは、乳房切除術とインプラントによる即時再建術を受け術後放射線療法を必要とする0期から3期の乳がん患者400人を募集した。研究者らは患者を中央値40カ月の期間追跡し、再発と放射線関連の副作用を観察した。

また、患者アンケートツールFACT-Bを用いて、放射線治療の6カ月後に身体的ウェルビーイングを含む患者報告結果を評価した。このツールは、患者に身体的、感情的、社会的および機能的にどのように感じるかを評価してもらい、総合点を測定するものである。

腫瘍学的転帰は両群間で非常に類似しており、追跡期間中央値40カ月後に再発を経験した患者数は同程度であった。放射線関連の副作用も同等であった。

本試験の主要評価項目である、患者報告による身体的ウェルビーイング評価の改善も、2つの治療群間で同程度であり、治療期間の短縮がQOLの大きな改善にはつながらないことが示唆された。45歳未満の患者では、短期間の放射線療法を受けた患者において、身体的セルフビーイングにわずかではあるが統計学的に有意な有益性が認められた。

しかし、短期の放射線療法は、患者の時間的・経済的な負担を軽減した。

「3週間と5週間の差は、仕事、家族、社会的および経済的生活への支障という点で、患者の生活の質を大きく改善するものです」とWong氏は言う。

例えば、この調査で治療のために無給休暇を取った患者のうち、短期コースの患者は73.7時間の無給休暇を要したが、長期コースでは125.8時間を要した。以前の調査では、5週間の放射線療法を受けた患者がスケジュールの時間的・経済的負担を指摘している。

さらに、短期の放射線療法を受けた患者の方が治療を休まなかった。放射線の中断は転帰の悪化につながる。

「これらの患者は、化学療法や多くの手術など、すでに多くの治療を受けています。5週間の治療がいかに負担であったかは、調査への回答からも明らかです」。

今後の研究において、研究チームは、有効性を損なうことなく治療の負担を軽減することを目指して、さらに短期間の放射線療法や新しい形態の放射線療法を引き続き検討する予定である。

本研究は、Patient-Centered Outcomes Research Institute(PCORI)賞(CER-1609-36063)の助成を受けて行われた。

  • 監訳 河村光栄(放射線科/京都桂病院)
  • 翻訳担当者 奥山浩子
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  • 原文掲載日 2023/10/01

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