乳がん手術を回避できた患者が前向きな経験を報告

MDアンダーソンがんセンター

化学療法に強い反応を示した乳がん患者の一部は手術を回避でき、また、放射線治療のみを受けた場合もがんの再発リスクが低いことが、これまでの研究で示唆されている。このような患者の経験を調べるために、Henry Kuerer医学博士とHelen Johnson医師の研究チームは、このような患者が経時的にどのように感じてきたかを解析した。その結果、この患者グループは全体として前向きな経験をしており、治療方針の決定に納得感があり、全体的なQOL(生活の質)が向上したと考えていることがわかった。これらの知見は、慎重に選択された患者にとって、手術を回避することは安全であるだけでなく、患者の幸福に資する可能性があることを示唆している。本研究は、各患者特有のニーズと好みを考慮した、乳がんに対する個別化治療アプローチの重要性を強調している。詳細はJAMA Network Open誌を参照のこと。

【MDアンダーソン研究ハイライト 2023/09/21】 特集:マイクロバイオームに関する洞察、KRAS阻害薬耐性を克服する標的、免疫療法に膠芽腫を感作する新規アプローチ、AMLの新薬など

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは、がんの治療、研究、予防における最新の画期的な発見を紹介している。これらの進歩は、世界をリードするMDアンダーソンの臨床医と科学者の垣根を超えた継ぎ目のない連携によって可能となり、研究室から臨床へ、そしてまた研究へと発見がもたらされる。

MDアンダーソンは、がん撲滅という自らの使命を遂行する中で、その原動力である優れた研究が果たす役割を理解し、がんによる負担を軽減するために、がん研究促進に向けた世界的な取り組みを訴える世界がん研究デー(9月24日)を支援する。

MDアンダーソンにおける最近の研究として、頭頸部がんに多い治療副作用に関連するマイクロバイオームの特徴の同定、KRAS阻害薬治療耐性を克服するための新しい標的、低リスク集団による遺伝子検査受検の敷居を低くする新しいモデル、 腫瘍微小環境を再プログラムし免疫療法に膠芽腫を感作するエピジェネティック標的、乳がん手術を回避できた女性の前向きな経験、腸内マイクロバイオームと黒色腫(メラノーマ)の進行との関係についての洞察、再発または難治性の急性骨髄性白血病に対するvibecotamab[ビベコタマブ]の第1相試験からの良好な結果、などがある。

  • 監訳 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター 乳腺腫瘍内科)
  • 翻訳担当者 奥山浩子
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  • 原文掲載日 2023/09/21

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