アナストロゾールは高リスク女性の乳癌予防に有効な可能性

キャンサーコンサルタンツ

アナストロゾール(アリミデックス)が、高リスクの閉経後女性の乳癌リスクを53%低下させたとする試験結果が、2013サンアントニオ乳癌シンポジウムで発表され、Lancet誌の電子版にも掲載された。

アナストロゾールは、閉経後女性のエストロゲン産生を遮断するアロマターゼ阻害剤の一種である。アロマターゼ阻害剤は、ホルモン受容体陽性乳癌の治療に広く用いられている薬剤であるが、ほかにも、乳癌の予防、特に乳癌リスクが高い女性の発症予防に何らかの役割を果たすのではないかと考えられる。

The International Breast cancer Intervention Study II(IBIS-II)試験では、乳癌のリスクが高い閉経後女性3,864人を対象とした。(家族歴があるか、これまでに非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌または異型乳管過形成の診断を受けたことがある場合に高リスクと定義した)。登録者をアナストロゾール1mg群とプラセボ群のいずれかに無作為に振り分け、それぞれ1日1回、5年間投与した。試験開始時と、その後は試験終了までの2年毎に乳房検査およびマンモグラフィ検査を実施した。

追跡期間中央値5年で、アナストロゾール群の40人(2%)およびプラセボ群の85人(4%)に乳癌の発症が認められた。全乳癌の7年後の累積罹患率は、プラセボ群が5.6%、アナストロゾール群が2.8%と推定された。乳癌を1人予防するための治療必要数は追跡期間7年間で36であった。エストロゲン除去に関連する副作用では、アナストロゾール群の方がプラセボ群よりもわずかに高頻度であるにとどまった。

著者らは、アナストロゾールが高リスクの閉経後女性の乳癌発症率を低下させるのに有効であるという結論が得られたとしている。アナストロゾールの一次予防効果は、別のアロマターゼ阻害剤エキセメスタン(アロマシン)や、選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)の2剤、タモキシフェンおよびラロキシフェン(エビスタ)を検討した試験で報告されているよりも大きかった。

以上の試験成績からみて、アナストロゾールが2013年のエキセメスタン(アロマシン)に続いて乳癌予防のガイドラインに追加される可能性が高いとみられる。

参考文献:
Cuzick J, Sestak I, Forbes JF, et al. Anastrozole for prevention of breast cancer in high-risk postmenopausal women (IBIS-II): an international, double-blind, randomised placebo-controlled trial. The Lancet. Published early online December 12, 2013. doi:10.1016/S0140-6736(13)62292-8


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翻訳担当者 中村幸子

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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