早期乳癌患者に対する腋窩リンパ節への照射がリンパ浮腫のリスクを抑制する

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早期の乳癌で、リンパ節移転陽性の患者に対して、腋窩リンパ節への照射は、郭清手術よりも、効果的かつリンパ浮腫の発症リスクを低く抑えられることが明らかになった。この研究結果は、2013年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会にて発表された。

早期の乳癌を患った女性にとって、腋窩(わきの下)リンパ節への転移有無を判定することは、癌の進行度分類において重要だ。腋窩リンパ節の評価には、しばしばセンチネルリンパ節の生検を必要とする。センチネルリンパ節は、癌が最初に転移しやすいリンパ節のことである。センチネルリンパ節に癌の転移がある場合は、患者はより侵襲的なリンパ節の手術(腋窩リンパ節の郭清)を受けることになる。腋窩リンパ節郭清の主な副作用は、腕のリンパ浮腫(リンパ液が溜まることで、腕にむくみが生じる症状)だ。

腋窩リンパ節に対する様々な治療法を評価する目的で、欧州の研究者らは、第3相臨床試験(AMAROS臨床試験)を実施した。試験の対象となったのは、早期の乳癌を患い、かつセンチネルリンパ節陽性の(センチネルリンパ節に癌を含有している)女性患者1,425人だった。患者らは、手術もしくは放射線による追加処置を受けた。

  • 5年後の生存率は、リンパ節郭清手術を行った患者では93.3%で、リンパ節に放射線による処置を行った患者では92.5%だった。無再発生存率は、手術群で86.9%、放射線群で82.7%だった。両群における差は、統計的有意性の基準に達しておらず、偶然によって生じたものと考えられる。
  • リンパ浮腫の発症率は、放射線群の患者の方が低かった。処置後の1年間で、手術群で40%、放射線群で22%の患者にリンパ浮腫が発症した。リンパ浮腫の発症頻度は、次年度以降減少したが、放射線群がより好ましい結果を出し続けた。5年目では、手術群のうち28%、放射線群のうち14%の患者でリンパ浮腫を発症した。

本研究により、リンパ節への放射線による処置は、早期乳癌を患う女性患者の一部に対して、リンパ節郭清の代替手段になり得るとういことが明らかになった。2つの処置方法は、同程度の効果を持つようだが、放射線治療は、リンパ浮腫を発症させる可能性が低いようである。

参考文献:

Rutgers EJ, Donker M, Straver ME et al. Radiotherapy or surgery of the axilla after a positive sentinel node in breast cancer patients: final analysis of the EORTC AMAROS trial (10981/22023). Presented at the 49th Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology. May 31-June 4, 2013; Chicago, IL. Abstract LBA1001.


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翻訳担当者 渡邊若菜

監修 中村光宏(医学放射線/京都大学大学院医学研究科)

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