アイアンガーヨガ、乳癌サバイバーの倦怠感改善に役立つ可能性

米国補完代替療法局(NCCAM)

2011年12月16日

アイアンガーヨガが、乳癌サバイバーの倦怠感および活力改善に役立つ可能性がでてきた。これは、Cancer誌上に掲載された米国国立補完代替医療センター(NCCAM)が資金助成した試験の結果に基づくもの。米国国立癌研究所のデータによれば、倦怠感は、がんサバイバーの生涯を通じて重大問題となりうることが示されている。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者らは、がんに関連した持続性の倦怠感がみられる乳癌サバイバー31人(全員が閉経後の女性)を対象に、12週間にわたって、倦怠感の改善を目的としたアイアンガーヨガクラスへの参加、または健康教育に関する講座への参加のいずれかに無作為に割り付けた。アイアンガーヨガとは、ハタヨガの一種であり、身体ポーズおよび呼吸法などを行うもの。このヨガクラス1回90分を週2回実施した。健康教育に関する講座では、がんに関連した倦怠感やがんサバイバーの生涯における心理社会的な問題等のテーマを扱った講義を、週1回120分行った。いずれのグループでも、家での練習や読み込みは指示されなかった。

12週目および介入終了から3カ月後、ヨガグループの参加者は、健康講座グループの参加者に比較して、倦怠感の程度が有意に改善されたことが報告された。活力に関しても同様に効果があり、この間、ヨガグループでは、健康講座グループよりも活力が有意に上昇した。3カ月目の追跡調査からは、両グループともに抑鬱症状および自覚ストレスについて同等の減少がみられている。しかし、睡眠、身体能力に関しては、有意な変化はみられなかった。

研究者らは、本試験の限界に関して、参加者の人数が少ない点や、参加者が早期疾患およびがん治療を終えた女性に限られていた点などを挙げている。したがって、本試験で認められた優れた効果は、乳癌サバイバーの中でも病期が進行しているか、現在治療中である場合には必ずしも当てはまるとは限らない。さらに、ヨガクラスの合計時間(36時間)は、健康講座(24時間)よりも長く、ヨガグループで優れた効果が認められた理由の一つとして、参加時間が長かったことが挙げられる可能性があると、研究者らは指摘する。彼らは、今後も研究を重ねる必要があると結論付けており、免疫および神経内分泌系へのヨガの影響については、本試験の参加者を対象に目下調査中であるとしている。

参考文献

Bower JE, Garet D, Sternlieb B, et al. Yoga for persistent fatigue in breast cancer survivors: a randomized controlled trial. Cancer. 2011;

追加参考文献

            Find Active Medical Research Studies on Cancer (ClinicalTrials.gov)

            Yoga Information

            Breast Cancer  (NCI)

            Cancer Pain, Depression and Fatigue (07/15/02) to (07/17/02)

翻訳担当者 濱田希

監修 大野智(腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学)

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原文掲載日 

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