長期追跡調査から、ゾメタは乳癌に対する有効性がある可能性

長期追跡調査から、ゾメタは乳癌に対する有効性がある可能性

キャンサーコンサルタンツ

ABCSC-12臨床試験の長期追跡調査から、ビスフォスフォネート製剤ゾメタ(ゾレドロン酸)により、早期ホルモン受容体陽性乳癌女性患者の予後が改善される可能性があることが示唆された。これらの結果は、CTRC-AACR サンアントニオ乳癌シンポジウム2011で発表された。

乳癌の大部分はホルモン受容体陽性である。これらの乳癌は、血液中を循環する女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンによって刺激され、増殖する。ホルモン受容体陽性乳癌の治療には、エストロゲンの作用を抑制または阻害するホルモン療法が行われることが多い。これらの治療薬には、タモキシフェンやアロマターゼ阻害剤として知られる薬剤が含まれる。

ゾメタはビスフォスフォネート製剤で、進行癌患者の癌関連高カルシウム血症(血液中のカルシウム濃度の上昇)や進行癌における骨転移の治療に使用される。最近の研究では、ゾメタの潜在的抗癌作用、および、早期乳癌女性患者の治療関連骨量減少の予防作用に注目が集まっている。ゾメタの潜在的抗癌作用に関する研究結果は不明である。

今回の第3相臨床試験では、I~II期ホルモン受容体陽性閉経前乳癌の患者1,803人を対象にして、ゾメタの効果が評価された。この研究は、Austrian Breast and Colorectal Cancer Study Group (ABCSG、オーストリア・乳癌・大腸癌研究グループ)により行われた。

術後全患者が、ゴセレリン(卵巣機能抑制)投与ならびにアリミデックス(アナストロゾール)またはタモキシフェン投与から成るホルモン療法を受けた。またその中で、ゾメタをそれぞれの治療に上乗せする治療群も設定された。ホルモン療法は3年間実施された。

前回の4年間にわたる追跡調査後の解析から、ゾメタ投与群は、ゾメタ非投与群よりも、乳癌再発リスクが低いことがわかった[1]。被験者は、現在、約7年間追跡調査を受けている[2]。

  • ゾメタ投与群では、再発リスクが28%減少し、死亡リスクが36%減少した。
  • 女性患者は顎骨壊死(顎の骨組織の死滅:同種の骨治療薬におけるまれな副作用)を発症しなかった。

これらの結果から、ゾメタにより、特定の早期乳癌女性患者の予後が改善される可能性があることが前回の報告に引き続き示唆された。しかし、すべての研究において早期乳癌に対するゾメタの効果が示されているとは限らず、また、この目的に関するゾメタの役割は依然として不明確である。

参考文献:

[1] Gnant M, Mlineritsch B, Schippinger W, et al. Endocrine therapy plus zoledronic acid in premenopausal breast cancer. New England Journal of Medicine. 2009;360:679-691
[2] Gnant M, Mlineritsch B, Luschin-Ebengreuth G et al. Long-term follow-up in ABCSG-12: significantly improved overall survival with adjuvant zoledronic acid in premenopausal patients with endocrine-receptor-positive early breast cancer. Presented at the 2011 CTRC-AACR San Antonio Breast Cancer Symposium. December 6-10, 2011. Abstract S1-2.


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翻訳担当者 渡邊 岳

監修 原野謙一(乳腺、婦人科/日本医科大学武蔵小杉病院)

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