Tykerb®は炎症性乳癌に有効

キャンサーコンサルタンツ
2006年12月

2006年サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で最近発表された結果によると、Tykerb (ラパチニブ)は、単剤またはタキソールR (パクリタキセル)との併用で炎症性乳癌に効果を示している

炎症性乳癌(IBC)は乳癌で最も攻撃的で致命的な型であり、ヒト上皮成長因子2(HER2 または ErbB2)の過剰発現や、ヒト上皮成長因子1 (EGFR または ErbB-1) を発現する傾向がある。TykerbErbB1ErbB2両方のチロシンキナーゼを標的とする経口の低分子薬である。Tykerbは前臨床モデルにおいてHER2陽性乳癌に有効性を示している。

完全奏効はIBC患者の生存期間の延長と関連しているので、研究者らはIBCの治療成績を改善する新しい方法を評価を継続している。

炎症性乳癌の治療の術前化学療法としてTykerbを評価するため、多施設第2相試験が最近実施された。この臨床試験には原発性炎症性乳癌であると新たに診断された35例の評価可能な患者が登録された。患者は2つのコホートに分けられた。コホートAはHER2過剰発現性癌(n=30)、コホートBはEGFR陽性HER2陰性の炎症性乳癌(n=5)であった。また、治療は、Tykerb単剤 (1500 mg/日)を14日間経口投与した後、12週間にわたってTykerb+タキソール(80 mg/m2)毎週を投与した。

・奏効率(CR + PR) はコホートAで77%、コホートBでは80%であった。
Tykerb単剤の奏効率はコホートAで30%、コホートBでは0%であった。
手術による病理学的完全奏効率(腫瘍部位およびリンパ節) はコホートAで17%、コホートBでは0%(この時点で評価可能な患者は3例のみ) であった。
Tykerbの投与で患者の60%にグレード3以上の下痢が生じた。患者の約20%でグレード3以上の無力症または倦怠感が生じた。患者1例が副作用のため投与を中断した。

Tykerbタキソールを併用して術前化学療法として使用すると特にHER2陽性乳癌の女性で有意な奏効性が見られると研究者らは結論を出した。とりわけTykerb単剤はHER2陽性乳癌で有意な奏効性がみられた。炎症性乳癌に対するTykerbについては、さらなる研究の妥当性があると研究者らは述べた。


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翻訳担当者 吉村 祐実

監修 瀬戸山 修(薬学)

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