増殖因子により術後補助化学療法を受けている閉経後患者の2次性AML、MDSリスク増大のおそれ

キャンサーコンサルタンツ
2007年2月

コロンビア大学の研究者らは、術後補助化学療法にNewpogen®(フィルグラスチム)やLeukine®(サルグラモスチム)を併用している閉経後リンパ節転移陽性初期乳癌患者は、化学療法単独の治療を受けた患者の場合よりも2次性の急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成性症候群(MDS)発症リスク増大の可能性がある、と報告した。本臨床試験の詳細は、Journal of the National Cancer Institute誌2007年2月7日号に掲載された。[1]

増殖因子は、多様な悪性腫瘍に対する化学療法の好中球減少予防・治療に多用されている。遺伝子組み換え型骨髄増殖因子の使用については、白血病発症が20年前から懸念されてきた。しかし、その懸念の裏付けとなる悪性疾患患者でのデータは現在まで少ない。

今回の試験は、65歳以上の閉経後患者5,510人でAMLまたはMDSの頻度を調べた。患者は、Ⅰ~Ⅲ期のリンパ節転移陽性乳癌患者で、NewpogenまたはLeukineいずれかを投与、または投与しない術後補助化学療法を受けている。増殖因子投与された患者数は906人であった。

著者らは、増殖因子を投与している患者の1.77%にAMLまたはMDSが発症したが、増殖因子を投与していない患者では1.04%であったと報告した。増殖因子を投与している患者のAMLまたはMDS発症のハザード比は2.14であった。診断から48ヶ月以内のAMLまたはMDS発症率は、増殖因子投与群で1.8%、増殖因子非投与群では0.7%であり、増殖因子投与群の発症のハザード比は2.59であった。著者らは、増殖因子投与患者では、AMLやMDS発症のリスクが倍増するが、そのリスクが低いと結論付けた。

しかしながら、データベースの性質上、著者らは2次性AMLおよびMDS発症に関する化学療法の用量強度(投与量)の役割を明らかにすることができなかった。著者らは「リスク増大の要因は増殖因子にあるのか、それとも増殖因子投与の必要性にあるのか、明らかではない。」と述べている。

関連論説では、増殖因子投与術後補助集中化学療法から得られる恩恵は、2次性発癌のリスクよりはるかに大きいと記述されている。[2]著者らはまた、「未知の要因全てを検討しても、それらとの因果関係は見当たらない。数少ない後ろ向き試験から得られた、AML/MDS発症におけるG-CSFの潜在的役割を証明するものは、結論的なものでなく、あ榎本 裕(泌尿器科)で仮説的なものとして扱われるべきである。」と述べている。

コメント

リスクがもし他の臨床試験で確認されたとしても、現在の初期乳癌治療を変えてしまうほど大きな影響はおそらくないであろう。本論文により、上記の所見に対する反論や確認するための他の臨床試験が間違いなく促進されるであろう。

参考文献
[1] Hershman D, Neugut AI, Jacobson JS, et al. Acute myeloid leukemia or myelodysplastic syndrome following use of granulocyte colony-stimulating factors during breast cancer adjuvant chemotherapy. Journal of the National Cancer Institute 2007;99:196-205.
[2] Twuw IP and Bontebai M. Granulocyte colony-stimulating factor: Key factor or innocent bystander in the development of secondary myeloid leukemia. Journal of the National Cancer Institute 2007;99:183-186.


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翻訳担当者 Chachan

監修 瀬戸山 修(薬学)

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