E75(Neuvax)ワクチンが高リスク局所乳癌の再発を抑える可能性

キャンサーコンサルタンツ
2008年2月

U.S. Military Cancer Institute Clinical Trials Group Study(米軍癌研究所臨床試験研究グループスタディ)の研究者らは、E75(NeuVax)ワクチンが安全で、HER-2陽性の腋窩リンパ節が陽性および陰性の乳癌患者における再発を抑えると報告した。詳細は2008年2月1日発行のClinical Cancer Research誌に掲載された。

過去20年にわたり、局所乳癌患者の再発予防を目的に、化学療法を補完する、あるいは化学療法に代わる効果的なワクチンの開発が多数試みられてきた。現在のところ、この目的を達するFDAに承認されたワクチンはない。

E75ペプチドはHER2/neuタンパク由来の抗原性ペプチドである。免疫刺激特性が有望視されることから、研究者らはE75ペプチドを活用しGM-CSFと混合した皮内投与ワクチンを作成した。

E75ペプチドワクチンの評価を行った結果は2006年のサンアントニオ乳癌会議で報告され、今般出版された。本分析は2つの別個の研究を合わせたものである。1つは腋窩リンパ節陽性の乳癌患者(n=95)による安全性研究で、もう1つは腋窩リンパ節陰性の乳癌患者(n=91)による投与量の最適化研究である。HLA-A2またはHLA-A3が陽性の患者101人にワクチンを接種し、他のHLA抗原の患者にはワクチンを接種せず観察とした。患者は標準的な外科手術と内科的治療を受けており、ワクチン投与前に乳癌再発を示す証拠は見られなかった。

表1:24ヶ月の追跡調査結果

 ワクチン接種群観察群P値
再発率5.3%14.2% < 0.04

副作用は局所的なものが主で、多くはグレード1または2であった。

研究者らは、高リスクの早期乳癌患者においてE75ワクチンは再発を50%以上低下させる可能性があると結論づけた。このワクチンをさらに評価するための第3相臨床試験の実施が正当化された。研究者らはまた、免疫が時間の経過とともに減衰するため、再発防止には定期的な追加免疫接種が必要だと強調している。

コメント: 

これらは非常に有望な結果であり、ランダム化第3相臨床試験で追認されることが期待される。

参考文献
1 Peoples GE, Holmes JP, Hueman MT, et al. Combined clinical trial results of a HER2/neu (E75) vaccine for the prevention of recurrence in high-risk breast cancer patients: U.S. Military Cancer Institute Clinical Trials Group Study I-01 and I-02. Clinical Cancer Research. 2008;14:797-803.

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翻訳担当者 橋本 仁

監修 林 正樹(血液腫瘍科)

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