エキセメスタン(アロマシン)はタモキシフェン (ノルバデックス)と比べて転移性ホルモン陽性乳癌の生存率を改善しない

キャンサーコンサルタンツ
2008年10月

転移性ホルモン受容体陽性乳癌において初期治療にアロマシン(エキセメスタン)を用いた場合、無増悪生存率は改善するが、ノルバデックス(タモキシフェン) と比べると全生存期間は改善できなかった、とEuropean Organisation for the Research and Treatment of Cancer (EORTC)およびBreast Cancer Cooperative Groupの研究者が発表している。本試験の詳細はJournal of Clinical Oncology 誌の2008年10月28日号で発表された[1]。

閉経後のホルモン陽性乳癌治療で第三世代非ステロイド系アロマターゼ阻害剤であるアロマシン、アリミデックス(アナストロゾール)およびフェマーラ(レトロゾール)がますます使用されるようになっている。この3剤は米国医薬品食品局(FDA)が承認済みのホルモン陽性乳癌を対象疾患とした薬剤である。アロマターゼ阻害剤はノルバデックスが奏効しなかった患者でも有意に作用する。また、高リスク女性におけるアロマターゼ阻害剤による乳癌予防に関する臨床試験も実施中である。今回の臨床試験の結果から、ホルモン受容体陽性乳癌の閉経後女性の補助療法としては、アロマターゼ阻害剤はノルバデックスよりも有効であることが示唆された。この他に3つの臨床試験で転移性乳癌の初期治療を対象にアロマターゼ阻害剤とノルバデックスを比較しており、アロマターゼ阻害剤はノルバデックスと比べて、若干優れているかまたは同等の有効性を示すものの、生存率には効果がなかった[2-4]。

EORTCが実施した臨床試験では、81カ所の医療施設において進行性ホルモン陽性乳癌患者371人の初期治療で、アロマシンとノルバデックスを比較した。

全奏効率はアロマシン群では56%、ノルバデックス群では31%であった。ノルバデックスの前治療歴がある患者を除き、解析した各サブグループの奏効率はアロマシンが高かった。ノルバデックスを投与されたことがある患者においては2つの薬剤の奏効率は同等であった。また、ノルバデックスによる治療を受けた患者の無増悪生存期間が5.8カ月に対し、アロマシンによる治療を受けた患者では9.9ヵ月であった。Log-rank testにおいてこの差は有意でなかったが、Wilcoxin testではp値は0.03であった。両薬剤とも忍容性良好であった。2つの患者群における生存率には差がなく、両群ともに2年後の生存率は約65%であった。

閉経後の転移性乳癌女性に対する初期ホルモン治療としてアロマシンは有効で忍容性が高いと結論づけた。さらに、アロマシンはノルバデックスと比べて腫瘍進行までの期間に有意な早期改善を示すようである。アロマシンがQOLを指標とした評価で改善を示すことができれば、臨床上有益である可能性があるとこの論文の著者らは予想している。

コメント:

これらの結果は、ホルモン陽性乳癌患者にとってアロマシンの方がよりよい選択肢であるかもしれないことを示唆しているが、意味のあるデータとするには他の療法と組み合わせて評価する必要がある。

参考文献:

1.MParidaens R, Dirix L, Beex L, et al. Phase III Study Comparing Exemestane With Tamoxifen As First-Line Hormonal Treatment of Metastatic Breast Cancer in Postmenopausal Women: The European Organisation for Research and Treatment of Cancer Breast Cancer Cooperative Group. Journal of Clinical Oncology. 2008;26:4883-4890
2. Nabholtz JM, Buzdar A, Pollak M, et al: Anastrozole is superior to tamoxifen as first-line therapy for advanced breast cancer in postmenopausal women: Results of a North American multicenter randomized trial—Arimidex Study Group. J Clin Oncol 18:3758-3767, 2000
3. Bonneterre J, Thurlimann B, Robertson JF, et al: Anastrozole versus tamoxifen as first-line therapy for advanced breast cancer in 668 postmenopausal women: Results of the Tamoxifen or Arimidex Randomized Group Efficacy and Tolerability study. J Clin Oncol 18:3748-3757, 2000
4. Mouridsen H, Gershanovich M, Sun Y, et al: Superior efficacy of letrozole versus tamoxifen as first-line therapy for postmenopausal women with advanced breast cancer: Results of a phase III study of the International Letrozole Breast Cancer Group. J Clin Oncol 19:2596-2606, 2001


 c1998- 2008CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 下和田 篤子

監修 関屋 昇(薬学)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

浸潤性乳がんの治療に手術不要の可能性の画像

浸潤性乳がんの治療に手術不要の可能性

薬物治療後の乳房手術を省略しても、患者は5年後もがんのない状態を維持していたネオアジュバント(術前)化学療法と標準的な放射線治療で完全奏効を示した早期乳がん患者にとって、手術は...
50歳以上乳がん女性における低頻度マンモグラフィ検査は年1回検査と比較して非劣性の画像

50歳以上乳がん女性における低頻度マンモグラフィ検査は年1回検査と比較して非劣性

Mammo-50試験の結果乳がんの初回診断時に50歳以上かつ診断後3年間再発のない女性において、低頻度のマンモグラフィ検査が年1回のマンモグラフィ検査と比較して劣性ではないこと...
術前化学療法にPD1阻害薬追加で高リスク早期ER+HER2-乳がんの完全奏効率が有意に上昇の画像

術前化学療法にPD1阻害薬追加で高リスク早期ER+HER2-乳がんの完全奏効率が有意に上昇

CheckMate7FL試験およびKEYNOTE-756試験結果CheckMate7FL試験(ランダム化多施設二重盲検プラセボ対照第3相試験)では、アントラサクリンおよびタキサ...
健康な女性にも乳がんに似た細胞があることが研究で判明の画像

健康な女性にも乳がんに似た細胞があることが研究で判明

乳房組織には、浸潤性乳がんに見られる遺伝子変化を持つ正常細胞が含まれており、将来の早期発見へのアプローチの指針となる可能性がある。

健康な女性の場合、一見正常に見える乳房細胞の一部に浸潤...