進行乳癌に対する一次治療として、フェマーラにタイケルブを上乗せすると臨床的有用性が向上する/サンアントニオ乳癌シンポジウム

キャンサーコンサルタンツ
2008年12月

閉経後のホルモン受容体陽性かつHER2陽性転移性乳癌患者に対する一次治療として、フェマーラ(レトロゾール)にタイケルブ(ラパチニブ)を上乗せすると、フェマーラ単独投与と比較して、無増悪生存期間や全体的な臨床的有用性を高めるということが、大規模第3相臨床試験の結果から示された。これらの結果は、先日、2008年サンアントニオ乳癌シンポジウムにて発表されたものある。

タイケルブは、上皮成長因子受容体(EGFR)とヒト上皮成長因子受容体2型(HER2)を標的とする経口チロシンキナーゼ阻害薬であり、ゼローダ(カペシタビン)との併用療法として、アントラサイクリン、タキサン、ハーセプチン(トラスツズマブ)などの治療を過去に受けたことのあるHER2陽性乳癌患者に対する治療法として認められている。しかし、さまざまな臨床病期の乳癌やその他の癌腫に対する治療においても、臨床試験で評価されつつある。

EGFRとHER2成長因子受容体の活性化は、ホルモン陽性乳癌患者に見られる内分泌治療への耐性に関連しているとされており、それゆえにホルモン感受性の疾患を伴う患者にとってはホルモン治療の効果を妨げるものになっている。研究者たちは、この問題に取り組むため、ホルモン受容体陽性の腫瘍を有する患者において、EGFRとHER2を標的とする治療が、ホルモン療法への感受性を回復することができるかどうかを研究してきている。

バンダービルト大学や他の医療機関の研究者たちによって、最近、前向きランダム化プラセボ対照第3相臨床試験が実施された。本試験ではエストロゲン受容体及び・又はプロゲステロン受容体陽性で、化学療法未治療の閉経後転移性乳癌患者1,286人を対象とした。全ての患者にフェマーラ(2.5 mg/日)が投与され、さらにタイケルブ(1,500 mg/日)の追加投与またはプラセボ追加投与のいずれかに無作為割付された。

 ・HER2陽性の癌患者(219人)において、無増悪生存期間はプラセボ投与群(3.0ヵ月)と比較し、タイケルブ投与群では2倍以上(8.2カ月)であった(p値0.019)。

 ・タイケルブを投与されたITT解析集団においても、無増悪生存期間はわずかではあるが有意に改善された(中央値11.9カ月対10.0カ月、ハザード比0.86、p値0.026)。

 ・臨床的に意義のある心障害の徴候は報告されなかった。

 ・併用投与群において、グレード3の下痢により9人が中止した。

 ・HER2陽性の患者において、プラセボ投与群では28.7%の患者で病勢安定(SD)がみとめられたのと比較し、タイケルブ投与群では48.7%であった(p値0.003)。

本臨床試験の結果は、閉経後のホルモン受容体陽性かつHER2陽性の乳癌患者に対して、一次治療としてフェマーラにタイケルブを追加することにより、顕著な有用性を示した。これらの結果は、最終的にタイケルブとフェマーラの併用が本疾患の患者に対する新しい標準治療となる可能性を示しているかもしれない。

参考文献:
Johnston S, et al. Lapatinib combined with letrozole vs. letrozole alone for front line postmenopausal hormone receptor positive (HR+) metastatic breast cancer (MBC): first results from the EGF30008 trial. Proceedings from the San Antonio Breast Cancer Symposium 2008. Abstract 46.


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翻訳担当者 國重敦子

監修 千種葉月(薬学)

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