乳癌のリンパ浮腫リスクを予測する

キャンサーコンサルタンツ

研究者らは、乳癌の腋窩リンパ節郭清(脇の下リンパ節切除)後のリスクを予測するために患者および治療の様々な特性を考慮するツールを開発した。このツールを利用した結果は2011年乳癌シンポジウムで発表される予定である。

リンパ浮腫とはリンパ液の貯留によるむくみである。乳癌患者は、腋窩リンパ節を切除後、腕にリンパ浮腫を発現する可能性がある。広範囲にリンパ節を切除すると(腋窩リンパ節郭清として知られている)わずかなリンパ節切除(センチネルリンパ節生検として知られている)の場合よりもリンパ浮腫を引き起こす可能性が高いが、いずれの処置に従ってもリンパ浮腫が起こる可能性がある。

腋窩リンパ節郭清を受けた約3分の1の女性がリンパ浮腫を発現する。リンパ浮腫の管理に役立つツールとしては、用手的リンパドレナージ、圧迫包帯と着衣の使用、皮膚と爪のケアの訓練(感染リスクを低下させるため)および運動の指導などがある。

腋窩リンパ節郭清を受けた女性の中にリンパ浮腫を発現する人としない人がいる理由は不明である。いずれの女性がリンパ浮腫を発現するリスクが高いかを予測するために、研究者らは、患者の特性および癌治療の種類によっていかにリンパ浮腫リスクが変動するかを検討した。

リンパ浮腫リスクに関連する因子は、年齢、体格指数、乳癌と同じ側の腕への化学療法薬の注入、リンパ節郭清の範囲、放射線照射野の位置、術後血清腫(体液の貯留)、感染および早期浮腫(むくみ)であった。手術前にリンパ浮腫リスクの最初の評価ができ、その後、手術後に収集された情報に基づいて、リスク予測を修正することができる。

リンパ浮腫予測の統計学的モデルは70%以上の精度であった。このモデルは引き続き改善されるが、最終的には、腋窩リンパ節郭清前後の女性のカウンセリングおよび管理に重要なツールを提供するものであろう。

参考文献:

Bevilacqua JLB, Kattan MW, Yu C et al. Nomograms for predicting the risk of arm lymphedema after axillary dissection in breast cancer. Paper presented at: 2011 Breast Cancer Symposium; September 8-10, 2011; San Francisco, CA. Abstract 8.


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翻訳担当者 西川地江子

監修 原 文堅(乳腺科/四国がんセンター)

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