2010/02/09号◆FDA最新情報「癌治療薬ラパチニブの新たな適応」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年2月9日号(Volume 7 / Number 3)
日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

____________________

◇◆◇ FDA最新情報 ◇◆◇

癌治療薬ラパチニブの新たな適応

FDAは抗癌剤ラパチニブ(タイケルブ)をレトロゾール(フェマーラ)と組み合わせて、閉経後の女性のHER2陽性かつホルモン受容体(HR)陽性の進行乳癌治療に使用することを承認した。これまではこれらの女性はいずれかのホルモン療法のみを受けていたが、ラパチニブを加えることによる治療効果向上を示唆する新たなエビデンスが得られた。

この根拠となったのは、ホルモン療法が適応となる進行性転移乳癌の女性に対して、ラパチニブおよびアロマターゼ阻害剤レトロゾールの併用群とレトロゾール単独群を比較した第3相臨床試験EGF30008である。併用療法を受けた女性では、レトロゾール単独群に比べて、無増悪生存期間は2倍以上であった(35週対13週)。

また、併用治療群の患者は全奏効率と病勢安定(SD)の割合がより優れていると、本臨床試験責任医師で英国癌研究所(Institute of Cancer Research)のDr. Stephen Johnston氏は2008年のNCIキャンサーブレティン誌に述べ、「以前ならこれらの患者は内分泌療法のみの治療を受けていたはずです。今では併用療法のほうがよりよい手法と考えられます」と続けた。

この臨床試験で全生存率の改善が見られるかどうかはまだ不明であるとFDAは声明のなかで述べている。

「タイケルブとフェマーラの組み合わせは進行乳癌の治療を受けている女性にとって、重要な治療の選択肢を提供します」とFDA抗腫瘍薬製品室(ODAC)長のDr. Richard Pazdur氏は声明で述べている。「このすべて経口での治療法は、HER2とホルモン受容体の両方を標的として作用し、癌細胞の増殖と転移を抑制します」。

******
杉田 順吉 訳
原 文堅(乳腺腫瘍医/四国がんセンター) 監修 

******

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

【ASCO2025】イナボリシブ併用療法で、進行乳がんの生存延長と化学療法の遅延が可能にの画像

【ASCO2025】イナボリシブ併用療法で、進行乳がんの生存延長と化学療法の遅延が可能に

ASCOの見解(引用)「INAVO120試験では、未治療でPIK3CA変異を有するホルモン受容体陽性転移乳がん患者さんの生存期間を有意に改善する分子標的治療レジメンの有効性が示...
転移予測にがん細胞の「くっつきやすさ」を評価ー乳がんDCISで研究の画像

転移予測にがん細胞の「くっつきやすさ」を評価ー乳がんDCISで研究

研究者らは、他の部位にまだがんが転移していない患者の治療方針について、腫瘍医がより良い判断を下すのに役立つと期待される装置を開発した。この装置は、腫瘍サンプル中のがん細胞の「接着性(く...
乳がん化学療法による神経障害にアルゼンチンタンゴ ダンス療法の画像

乳がん化学療法による神経障害にアルゼンチンタンゴ ダンス療法

化学療法の副作用としてよくみられる神経障害を伴う乳がんサバイバーに、アルゼンチンタンゴをアレンジしたダンス療法が自然なバランスと感覚を取り戻す助けとなっている。化学療法によって変化した...
浸潤性乳がんの治療に手術不要の可能性の画像

浸潤性乳がんの治療に手術不要の可能性

薬物治療後の乳房手術を省略しても、患者は5年後もがんのない状態を維持していたネオアジュバント(術前)化学療法と標準的な放射線治療で完全奏効を示した早期乳がん患者にとって、手術は...