癌ワクチン オンコファージ®が再発性神経膠芽腫に有望

キャンサーコンサルタンツ
2009年11月

癌ワクチンOncophage[オンコファージ]®(vitespen)が、再発性または進行性の高悪性度神経膠芽腫(GBM)患者の生存期間を延長することが、サンフランシスコ州カリフォルニア大学脳腫瘍研究センターの研究者らによって示唆された。本研究者らによる第2相臨床試験の詳細は、10月24日に行われたthe Society for Neuro-Oncology(SNO)およびthe American Association of Neurological Surgeons(AANS)CNS部の2009年合同会議上で発表された。

オンコファージは熱ショックタンパク質(HSP)に基づく癌ワクチンである。熱ショックタンパク質とは、体内で自然発生する物質で、接触した全てのペプチドと結合する性質を持つ。さらに抗原提示細胞を活性化し、間接的に抗原を提示し、抗原提示の間にペプチドを「シャペロニング(chaperoning)」する能力も有している。Antigenetics社では、個々の患者の腫瘍細胞とHSPを混合することにより、腫瘍特異または腫瘍関連抗原として働く患者特有のペプチドの製造行程を開発した。これを、ペプチド製造用の癌を摘出した患者に再び注入すると、その癌への特異的免疫反応が発現する。つまり本ワクチンには、癌中に存在する多数の腫瘍抗原が全て含まれている事を意味している。

再発性または進行性の高悪性度神経膠芽腫におけるオンコファージの安全性と有効性は第2相臨床試験によって評価されており、最終的な登録患者数は50人になると思われる。本試験は継続中だが、その中間結果がSNOおよびAANSのCNS部の2009年合同会議上で発表された。

・オンコファージ治療を行った最初の20人の生存期間中央値は10.1カ月だった。
・30%の患者が、1年もしくはそれ以上生存している。

本報告の著者らが引用した過去のデータによると、再発性神経膠芽腫患者の生存期間中央値は平均6.5カ月だと示されている。また別の引用データでは、アバスチン®(ベバシズマブ)は同疾患患者の生存期間中央値を9.2カ月に延長することが示唆されている。

コメント:
本結果より、本著者らはオンコファージが再発性または進行性神経膠芽腫患者の有望な治療法になりうると示唆している。

参考文献:
Antigenetics社プレスリリース。SNO 2009にてOncophage® cancer vaccine in recurrent gliomaとしてデータ発表。http://www.antigenics.com/news/2009/1026.phtml アクセス日2009年11月4日


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 志村 美奈(薬学)

監修 関屋 昇(薬学)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

脳腫瘍に関連する記事

ともにより良い治療を築く:脳腫瘍治療の向上の画像

ともにより良い治療を築く:脳腫瘍治療の向上

テモゾロミド(販売名:テモダール)は、当研究所の科学者が発見し開発した化学療法薬で、脳腫瘍の治療を一変させた。

これは決して大げさな表現ではなく、テモゾロミドは、成人の脳腫瘍の中でも最も発生頻度...
小児脳腫瘍の一部には化学療法よりもダブ+トラ標的療法が有効の画像

小児脳腫瘍の一部には化学療法よりもダブ+トラ標的療法が有効

新しい臨床試験の結果によれば、低悪性度グリオーマ(神経膠腫)と呼ばれる脳腫瘍の小児の一部には、新たな標準治療ができるかもしれない。この試験では、安全性に加え、腫瘍を縮小させて進行を抑制する効果について、ダブラフェニブ(タフィンラー)とトラメ
ASCO22発表(1):膠芽腫に対する免疫療法薬の併用は安全かつ有望/リンチ症候群を検出する患者記入型ツールの画像

ASCO22発表(1):膠芽腫に対する免疫療法薬の併用は安全かつ有望/リンチ症候群を検出する患者記入型ツール

ASCO年次総会でのDana-Farberの研究。ダナファーバーがん研究所のこれらの研究の結果は、Dana-Farberの研究者が率いる他の数十の研究とともに、2022年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で発表されます。 【1】膠芽腫
ナノ粒子により実験的髄芽腫治療の効果が飛躍的に向上の画像

ナノ粒子により実験的髄芽腫治療の効果が飛躍的に向上

抗がん剤パルボシクリブ(販売名:イブランス)をナノ粒子に充填することで、脳腫瘍の一種である髄芽腫に対する抗がん作用が高まることが、マウスを用いた新たな研究で明らかになった。この研究を主導した研究者らによると、ナノ粒子コーティングによって腫瘍