HPVによる再発性呼吸器乳頭腫症への遺伝子治療が臨床効果を示す
概要
米国国立衛生研究所(NIH)の研究者らが主導した臨床試験において、PRGN-2012と呼ばれる実験的遺伝子治療が、再発性呼吸器乳頭腫症(RRP)の患者に有効な治療法となる可能性があることが実証された。このまれな衰弱性疾患は、ヒトパピローマウイルス(HPV)6型および11型の慢性感染によって引き起こされ、呼吸器全体に非がん性腫瘍(乳頭腫)を形成し、発声や呼吸に影響を及ぼす。本試験結果は2025年1月21日、The Lancet Respiratory Medicine誌に掲載された。
現在、再発性呼吸器乳頭腫症(RRP)の治療としては手術が行われるが、手術を繰り返すと、やがて声帯や気道が損傷する可能性がある。PRGN-2012では、バイオ製薬会社Precigen社が設計した改変ゴリラアデノウイルスを使用して、HPV 6またはHPV 11に感染した細胞に、免疫反応を誘発する遺伝子を送り込む。フェーズ1/2試験では、RRPの成人患者35人が乳頭腫除去手術後に PRGN-2012治療を受けた。これらの患者のうち18人は治療後1年間、乳頭腫を除去する処置が必要なかった。追跡期間中央値の22カ月後、15人の患者は依然として追加の処置を必要としなかった。副作用として疲労感や悪寒などがあったが、軽度であった。
この試験は、NIHの国立がん研究所(NCI)とPrecigen社との共同研究開発契約の一環として実施された。
研究者
Clint T. Allen医師(M.D.)、Scott M. Norberg医師(D.O.) 米国国立がん研究所がん研究センター
研究
「再発性呼吸器乳頭腫症の成人に対するPRGN-2012遺伝子治療:きわめて重要な第1/2相臨床試験(原文)」は、2025年1月21日にThe Lancet Respiratory Medicine誌に掲載された。
- 監修 稲尾崇(神鋼記念病院/呼吸器内科)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2025/02/13
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