FDAがKRAS G12C変異陽性非小細胞肺がんにアダグラシブを迅速承認

2022年12月12日、米国食品医薬品局(FDA)は、FDAが承認した検査でKRAS G12C変異が認められた局所進行または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の全身治療歴のある成人患者を対象に、RAS GTPaseファミリー阻害剤であるアダグラシブ [adagrasib](販売名:Krazati、Mirati Therapeutics社)を迅速承認した。

FDAはまた、Krazatiのコンパニオン診断薬として、therascreen KRAS RGQ PCRキット(組織用、QIAGEN社)およびResolution ctDx FIRSTアッセイ(血漿用、Agilent 社)も承認した。血漿検体で変異が検出されない場合は、腫瘍組織を検査する必要がある。

本承認は、KRAS G12C変異が認められる局所進行または転移性NSCLC患者を対象とした多施設共同単群非盲検臨床試験であるKRYSTAL-1試験(NCT03785249)に基づく。有効性は、プラチナ製剤を含む化学療法と免疫チェックポイント阻害剤の同時投与もしくは順次投与による治療中または治療後に病勢進行が認められた患者112人を対象に評価した。患者には、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで、アダグラシブ600 mgを1日2回経口投与した。

主要有効性評価項目は、RECIST第 1.1版を用いた盲検独立中央判定による客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)であった。ORRは43%(95% CI:34%、53%)、DORの中央値は8.5カ月(95% CI:6.2、13.8)であった。

特に多くみられた有害反応(20%以上)は、下痢、悪心、疲労、嘔吐、筋骨格痛、肝毒性、腎機能障害、呼吸困難、浮腫、食欲減退、咳嗽、肺炎、浮動性めまい、便秘、腹痛、QTc間隔延長であった。特に多くみられた臨床検査値異常(25%以上)は、リンパ球減少、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、ナトリウム減少、ヘモグロビン減少、クレアチニン増加、アルブミン減少、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、リパーゼ増加、血小板減少、マグネシウム減少およびカリウム減少であった。

アダグラシブ錠の推奨用量は、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで、600 mgを1日2回の経口投与である。

Krazatiの全処方情報はこちらを参照。



監訳 吉松 由貴(呼吸器内科/University of Greenwich, Queen Elizabeth Hospital)

翻訳担当者 川北 みゆき

原文を見る

原文掲載日 2022/12/12


肺がんに関連する記事

EGFR阻害薬耐性肺がん細胞に新たな標的CD70を発見の画像

EGFR阻害薬耐性肺がん細胞に新たな標的CD70を発見

MDアンダーソンがんセンター前臨床試験で、CD70を標的とした細胞療法、抗体薬物複合体による耐性腫瘍細胞の除去を確認
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、EGF...
肺温存手術は一部の早期肺がん患者で有効の画像

肺温存手術は一部の早期肺がん患者で有効

米国国立がん研究所(NCI)
肺がんが早期、つまり肺外に拡がる前に発見された場合、通常は腫瘍切除のための外科手術が行われる。25年以上前から、こうした早期がん患者に対しては、たとえ腫瘍が非常に小...
ペムブロリズマブ術前療法がMSI-H/dMMR固形がんの転帰を改善の画像

ペムブロリズマブ術前療法がMSI-H/dMMR固形がんの転帰を改善

【MDアンダーソンがんセンター研究ハイライト 2023/01/11】よりMSI-H/dMMR固形がんにおいて術前免疫療法が可能性を示す免疫チェックポイント阻害薬であるペ...
ドムバナリマブ併用療法は進行性非小細胞肺がんに対して免疫療法薬単剤より優れているの画像

ドムバナリマブ併用療法は進行性非小細胞肺がんに対して免疫療法薬単剤より優れている

ASCOの見解

「新たな免疫チェックポイント受容体であるTIGIT標的を検討した先行研究で得られたシグナルはまちまちのものでした。本試験における免疫療法薬併用治療の有望な結果は、さらなる調査を支...