肺がんの見落としを防ぐ早期発見プログラム

画像検査は外傷や疾患の診断に広く用いられているが、肺がんのわずかな初期徴候をとらえるという副次的メリットがある。

コンピュータ断層撮影(CTスキャン)は疾患の診断に重要な情報を提供するが、これらの画像検査では、「偶発」所見と呼ばれる関係のない別の所見もみつかることがあり、医師が当初想定していなかった問題を提起する。

オハイオ州立大学総合がんセンターのアーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC – James)の新たな肺結節プログラムでは、自動自然言語処理ツールの利点を下位専門分野治療チームと組み合わせて、偶発的な肺結節所見にフラグを付与し、系統的に評価することによって肺がんのわずかな徴候を検知するシステムを作成している。このプログラムによって早期発見が可能となり、年間数百人の命が救われると専門家らは推定する。

米国では年間7500万件を超えるCTスキャンが実施され、毎年約150万件の肺結節が偶発的に検出されている。「データは、これらの所見が70%の確率で見落とされることを示しています。これは驚くべきことですが、同時に医療界として解決策を生み出す大きなチャンスであることも示しています」と語るのは、この取り組みを率いるOSUCCC – Jamesの肺がん専門呼吸器科医Jasleen Pannu博士である。

Pannu氏は、別の疾患の検査目的で行われた胸部CTスキャンによって発見された肺結節のおよそ10%ががんであると推定する。しかし、追加検査が必要なかげを見極めるのはむずかしい。

アメリカがん協会(ACS)によると、年間の肺がん死亡者数は、乳がん、大腸がん、前立腺がんの合計よりも多く、その主な原因は進行期でみつかるからとされている。

「初期の肺がんは症状に乏しく、早期発見が困難です。肺の中にごく小さな結節として現れますが、気道や血管を塞ぐほどの大きさではありません。そのため、長い間見落とされてしまうのです」とPannu氏は語る。「しかし、肺結節が他の検査で偶然見つかり、(AIによって)肺がんリスクが高いかどうかが判断され、患者がタイムリーな介入を確実に受けられるというように、偶発的な肺結節所見は、早期発見への新たな道を開きます」。


OSUCCC – James肺結節プログラムの概要

今年、OSUCCC – Jamesとオハイオ州立大学ウェクスナー医療センターが共同で開始した肺結節プログラムは、機械学習ツールを用いて胸部CTの偶発的な肺結節所見を検知し、追加検査が必要な患者を特定するシステムを作成するために開発された。

これにより、オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのような大規模な医療機関では、年間平均1万件という大量のCTスキャンが電子カルテ上でフラグ付けされ、フォローアップ評価が行われる。Pannu氏は、これらの肺の結節の90%は良性であると考えている。

「これらの症例を見誤らないためにも、生検を行うべき患者を正確に特定するプロセスを構築することが重要です」とPannu氏は語る。「これは、各患者に対する適切なレベルのフォローアップ検査と、膨大な偶発所見のタイムリーな収集、評価、および順位付けを同じ人的資源の中で両立させる作業なのです」。

OSUCCC – James肺結節プログラムには、呼吸器IVR、放射線科、外科、腫瘍科、呼吸器科、およびその他の専門分野の専門家が参加している。毎週開催される集学的肺結節委員会では、個々の症例が議論され、肺生検を必要とする、偶発的な肺結節所見と複雑な症例について、治療方針が決定される。OSUCCC – James胸部腫瘍センターで毎週開催される集学的診療では、患者との対面診療または遠隔診療が行われる。

肺がん検診の予約について

肺がんリスクの高い人には、これまでどおり肺がん検診が推奨される。2021年、米国予防医学専門委員会は肺がん検診の推奨事項を更新した。20パックイヤー(例:1日1箱×20年)の喫煙歴があり、現在喫煙中であるか過去15年以内に禁煙した50〜80歳の成人は、低線量CTスキャンによる肺がん検診を年1回行うよう推奨している。



監修 河村 光栄(放射線科/京都桂病院)

翻訳担当者 工藤 章子

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原文掲載日 2022/11/10

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