FDAが肺がん(NSCLC)にトレメリムマブ+デュルバルマブ+化学療法併用を承認
2022年11月10日、米国食品医薬品局(FDA)は、感作性上皮成長因子受容体(EGFR)変異または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)ゲノム腫瘍異常のない転移性非小細胞肺がん(NSCLC)成人患者に対し、トレメリムマブ(販売名:Imjudo、AstraZeneca Pharmaceuticals社)を、デュルバルマブ(販売名:イミフィンジ、AstraZeneca Pharmaceuticals社)およびプラチナ系抗がん剤との併用療法薬として承認した。
有効性は、全身療法歴のない転移性のNSCLC患者を対象としたランダム化(1:1:1)、多施設共同、実薬対照、非盲検試験であるPOSEIDON(NCT031616)試験で評価した。患者は次の3つの治療群のいずれかに無作為に割り付けられた。(1)トレメリムマブ、デュルバルマブ、プラチナ製剤の化学療法を4サイクル実施し、その後デュルバルマブと維持化学療法を4週間ごとに実施する。患者は16週目に5回目のトレメリムマブ投与を受ける。(2)デュルバルマブ+プラチナ製剤の化学療法を4サイクル実施し、その後デュルバルマブと維持化学療法を実施する。(3)プラチナ製剤の化学療法を6サイクル実施し、その後維持化学療法を実施する。
治療は疾患進行または許容できない毒性が確認されるまで継続した。今回のFDA承認は治療群1と治療群3(675人)の比較に基づいている。
有効性の主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定で評価した無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)である。プラチナ製剤の化学療法と比較して、トレメリムマブにデュルバルマブとプラチナ製剤の化学療法を併用した療法でOSは統計的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.77[95%CI:0.65、 0.92]、両側p値=0.00304)。OS中央値は治療群1が14カ月(95%CI:11.7、16.1)、治療群3が11.7カ月(95%CI:10.5、13.1)であった。PFS中央値は、治療群1が6.2カ月(95%CI: 5.0、6.5)、治療群3が4.8カ月(95%CI 4.6, 5.8)であった(HR 0.72[95% CI: 0.60、0.86]、両側p値=0.00031)。
奏功率は、治療群1が39%(95% CI: 34、44)、治療群3が24%(95% CI: 20、29)であった。奏効期間中央値は、治療群1が9.5カ月(95% CI: 7.2、未到達)、治療群3が5.1カ月(95% CI: 4.4、6.0)であった。
主な副作用(20%以上の患者に発現)は、悪心、疲労、食欲減退、筋骨格系疼痛、発疹および下痢であった。グレード3または4の臨床検査値異常(10%以上)は、好中球減少、貧血、白血球減少、リンパ球減少、リパーゼ増加、低ナトリウム血症、血小板減少であった。
体重が30 kg以上の患者に対するトレメリムマブの推奨用量は75 mg点滴静注で、デュルバルマブ1500 mgとプラチナ製剤の化学療法とともに3週間ごとに4サイクル投与する。その後、維持化学療法とデュルバルマブ1500 mgを併用して4週間ごとに投与する。16週目に5回目のトレメリムマブ(75 mg)を投与する。
体重が30 kg以下の患者へのトレメリムマブの推奨用量は1 mg/kg、デュルバルマブは20 mg/kgで、投与スケジュールは上記のとおりである。
Imjudoおよびイミフィンジの全処方情報はこちら(Imjudo [英語], イミフィンジ [英語、日本語])を参照。
監訳:高濱 隆幸(腫瘍内科・呼吸器内科/近畿大学病院 ゲノム医療センター)
翻訳担当者 松長 愛美
原文掲載日
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