非小細胞肺がんの初回化学療法へのトリパリマブ追加で無増悪生存期間が延長

【ASCOの見解】

「本結果から、免疫療法薬と化学療法の併用が、ドライバー変異を持たない未治療の進行非小細胞肺がん患者の生存率を改善することが確認されました」-ASCO肺がんエキスパート  Maximilian Diehn医学博士

CHOICE-01試験の研究によると、EGFR/ALK変異のない進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、toripalimab[トリパリマブ]と初回化学療法を併用した場合、化学療法のみを受けた患者と比較して無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が良好であった。これらのデータは、2022年3月15日午後5時(米国東部時間)より、米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズのセッションで発表される。

中国の研究者らは、EGFR/ALK変異のない進行非小細胞肺がんで、転移性疾患に対してまだ体系的な治療を受けていない465人の患者を対象に研究を行った。患者は、化学療法との併用でトリパリマブ(309人)またはプラセボ(156人)を投与する群に2対1で無作為に割り付けられ、その後、病勢進行、忍容できない毒性が発現するまで、または2年間の治療終了までトリパリマブまたはプラセボと標準治療の維持療法が実施された。

事前に指定した最終無増悪生存解析では、無増悪生存期間はトリパリマブ群で8.4カ月、プラセボ群で5.6カ月であった。1年無増悪生存率はトリパリマブ群36.7%、プラセボ群17.2%であった。全生存期間(OS)の中間解析では、トリパリマブ群は全生存期間中央値に未達であり(半数以上が生存していた)、プラセボ群では17.1カ月であった。グレード3以上の有害事象の発現率は、両群間で同程度であった。トリパリマブ群では、プラセボ群と比較して投与中止に至る有害事象が多く(トリパリマブ群14.3%対プラセボ群5.5%)、致死的な有害事象も多く(トリパリマブ群3.2%対プラセボ群2.6%)認められた。

腫瘍の変異負荷が高い患者では、トリパリマブ群がプラセボ群よりも有意に無増悪生存期間を改善し(トリパリマブ群13.1カ月対プラセボ群5.5カ月)、FA-PI3K-Akt経路またはIL-7シグナル経路に変異がある患者では、プラセボ群のほうが有意に良好な無増悪生存期間を示した(プラセボ群8.9カ月対トリパリマブ群4.2カ月)。

中国北京の中国医学科学院・北京ユニオン医科大学国立がんセンター・がん病院のJie Wang氏は、「トリパリマブと化学療法は、ドライバー変異のない進行非小細胞肺がん患者の一次治療の選択肢となるでしょう」と話した。

本研究は、上海潤詩生物科技有限公司の資金援助により行われた。

翻訳担当者 大澤朋子

監修 吉松由貴(呼吸器内科/飯塚病院)

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