免疫療法薬を受けている肺がん脳転移患者の好中球/リンパ球比が生存期間と関連

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与とステロイド剤先行投与を受けた非小細胞肺がん脳転移患者において、好中球/リンパ球比(NLR)の低さが全生存期間の短さと関連していることが、単一施設でのレトロスペクティブ解析で明らかになった。

 「免疫チェックポイント阻害薬が非小細胞肺がんの治療に広く導入されたことで、多くの臨床医が、ステロイド剤の免疫抑制作用によって免疫療法の効果が低下することを懸念しています」と、フロリダ州のBaptist Health’s Miami Cancer Institute のManmeet Ahluwalia医師はロイター・ヘルスへの電子メールで述べている。

 「私たちは好中球/リンパ球比(NLR)が免疫活性の代替マーカーになるという仮説を立てていました。しかし、NLRでは免疫チェックポイント阻害薬投与後の頭蓋内反応を予測できませんでしたが、全生存期間を予測できることがわかりました」と、Ahluwalia医師は述べている。

 「他の研究では、好中球/リンパ球比(NLR)により化学療法、定位手術的照射および外科手術後の生存期間を予測できることが示されています」と、Ahluwalia医師は指摘した。「脳転移を伴う非小細胞肺がんでは、NLRが生存期間の強力な予測因子と考えてよいと思います」。

 Scientific Reports誌で報告されているとおり、研究チームは、免疫チェックポイント阻害薬を投与された171人の脳転移を伴う非小細胞肺がん患者で、全生存期間(OS)と頭蓋内無増悪生存期間(PFS)をレトロスペクティブに調査した。参加者の平均年齢は約64歳、約85%が白人であった。ステロイド剤先行投与群では37%が男性であったのに対し、非投与群では60%が男性であった。

 投与された免疫チェックポイント阻害薬は、ニボルマブ(販売名:オプジーボ)(101人)、ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)(52人)、アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)(14人)、デュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)(3人)、イピリムマブ(販売名:ヤーボイ)(1人)であった。

 36人が免疫チェックポイント阻害薬療法開始後30日以内にステロイド剤を投与されていた。

 多変量解析では、ステロイド剤先行投与が、全生存期間(中央値10.5カ月対17.9カ月)および頭蓋内無増悪生存期間(5.0カ月対8.7カ月)の有意な低下と関連していた。

 好中球/リンパ球比(NLR)とステロイド剤のモデル化を行ったところ、強い相互作用があり、ステロイド剤の影響は患者のNLRに依存することが示された。

 免疫チェックポイント阻害薬を投与する前にNLRが5以上であった参加者は53人で、このことは全生存期間(10.5カ月対18.4カ月)の悪化を示したが、頭蓋内無増悪生存期間(7.2カ月対7.7カ月)には影響しなかった。

 サブグループ解析では、好中球/リンパ球比(NLR)が4未満の患者においてのみ、ステロイド先行投与を行った場合の全生存期間に有意差が認められた(26.1カ月対15.6カ月)。

 「好中球/リンパ球比(NLR)が低い患者では、ステロイド剤の使用により免疫チェックポイント阻害薬の有効性が低下します。これらの結果により、免疫チェックポイント阻害薬を投与された患者におけるステロイド剤の影響について臨床医に知らせることができます」と、Ahluwalia医師らは結論づけた。

 「本研究はレトロスペクティブなものであるため、すべての結果を慎重に解釈する必要があります。しかし、他の施設の研究で今回の結果が確認されれば、本研究は、免疫療法とステロイド剤を併用する際の臨床的な意思決定の指針となるでしょう」と、Ahluwalia医師は述べている。

 「好中球/リンパ球比(NLR)は予後判定に使用できるシンプルで安価なツールです。私たちと他のいくつかのグループは以前、高NLRと免疫療法による予後不良との関連を発見しました」と、ニューヨーク市のNYU Langone’s Perlmutterがんセンターの胸部腫瘍科の責任者であるVamsidhar Velcheti医師はロイターズヘルスへの電子メールでコメントしている。

 「好中球/リンパ球比と根底にあるゲノムとの関連性はまだ不明であり、活発な研究が行われている分野です」と、今回の研究には関与していないVelcheti医師は述べている。「好中球/リンパ球比(NLR)は、腫瘍由来の骨髄細胞優位の免疫抑制表現型を克服するために併用療法を必要とする患者を特定することに使用できる可能性があります」。

引用:https://go.nature.com/3e0KsrZ、Scientific Reports誌、2021年4月5日オンライン版

翻訳担当者 会津麻美

監修 吉松由貴(呼吸器内科/飯塚病院)

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

欧州肺がん会議2024の画像

欧州肺がん会議2024

ESMO肺がん会議2024は、呼吸器外科医、胸部外科医、呼吸器内科医、呼吸器専門医、腫瘍内科医および放射線腫瘍医、画像下治療を行う放射線科医、病理医など、胸部腫瘍学分野の様々な専門家が...
免疫療法抵抗性肺がんにデュルバルマブ+セララセルチブ療法が有望の画像

免疫療法抵抗性肺がんにデュルバルマブ+セララセルチブ療法が有望

MDアンダーソンがんセンターデュルバルマブ+セララセルチブが肺がん患者の免疫反応を高め、予後を改善することが第2相試験で明らかにテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者...
ROS1陽性肺がんでレポトレクチニブが新たな治療選択肢にの画像

ROS1陽性肺がんでレポトレクチニブが新たな治療選択肢に

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ2023年11月、食品医薬品局(FDA)は、ROS1遺伝子融合と呼ばれる遺伝子変化を有する一部の進行肺がんの治療薬としてrepotrecti...
非小細胞肺がん、アロステリックEGFR阻害による薬剤耐性克服の可能性の画像

非小細胞肺がん、アロステリックEGFR阻害による薬剤耐性克服の可能性

ダナファーバーがん研究所アロステリック阻害薬EAI-432は、EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する新たな治療法を提供するEAI-432は、ATPポケット以外の部位に結...