FDAがPD-L1高発現の転移性非小細胞肺がんにアテゾリズマブを承認

2020年5月18日、米国食品医薬品局(FDA)は、PD-L1高発現(腫瘍細胞[TC]におけるPD-L1発現率が50%以上[TC≥50%]、または腫瘍浸潤免疫細胞[IC]におけるPD-L1発現率が10%以上[IC≥10%])で、EGFRまたはALK遺伝子変異を有さない、転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の成人患者を対象に、一次治療薬としてアテゾリズマブ(販売名:テセントリク、Genentech Inc.社)を承認した。

本日、FDAは、アテゾリズマブ治療対象となる転移性非小細胞肺がん患者選択のためのコンパニオン診断検査として、VENTANA PD-L1(SP142)アッセイ(Ventana Medical Systems, Inc.社)も承認した。

有効性は、転移性疾患に対する治療歴がなく、PD-L1発現(TC≥1%またはIC≥1%)を有するステージ4非小細胞肺がん患者を対象とした多施設共同国際非盲検ランダム化試験IMpower110(NCT02409342)で評価された。患者を無作為に(1対1の割合で)、アテゾリズマブ群(アテゾリズマブ1200mgを3週間毎に病勢進行または容認できない毒性が認められるまで投与)、またはプラチナ製剤ベースの化学療法群に割り付けた。有効性の主要評価項目は全生存期間(OS)であった。

本試験では、PD-L1高発現の患者へのアテゾリズマブ投与は、プラチナ製剤ベースの化学療法投与と比較して、統計学的に有意な全生存期間(OS)の改善を示した。全生存期間中央値は、アテゾリズマブ群で20.2カ月(95%信頼区間[CI]:16.5~評価不能)に対し、化学療法群で13.1カ月(95%CI:7.4~16.5)だった(ハザード比[HR]0.59;95%CI:0.40~0.89;p=0.0106)。中間解析または最終解析において、他の2つのPD-L1サブグループ(TC≥5%またはIC≥5%;TC≥1%またはIC≥1%)の全生存期間に統計学的に有意な差は認められなかった。

無増悪生存期間(PFS)中央値は、アテゾリズマブ群で8.1カ月(95%CI:6.8~11.0)、プラチナ製剤ベース化学療法群で5.0カ月(95%CI:4.2~5.7)であった(HR0.63;95%CI:0.45~0.88)。試験責任医師評価による奏効率(ORR)はそれぞれ38%(95%CI:29~48)、29%(95%CI:20~39)であった。

IMpower110試験におけるアテゾリズマブ単剤投与による、最も多かった有害反応(20%以上)は疲労/無力症であった。

非小細胞肺がん患者に対するアテゾリズマブの推奨用量は、2週間毎に840mg、3週間毎に1200mg、または4週間毎に1680mgを60分間かけて行う点滴静注である。

テセントリクの全処方情報はこちらを参照。(*参考:日本語のテセントリクの添付文書はこちらを参照)

本審査には、FDAによる評価を円滑に進めるために申請者が自発的に申請を行うAssessment Aidが用いられた。本申請はFDAの目標期日の1カ月前に承認された。

アテゾリズマブは優先審査の指定を受けた。FDA迅速承認プログラムについては、企業向けガイダンス「重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品およびバイオ医薬品」(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 為石万里子

監修 稲尾崇(呼吸器内科/天理よろづ相談所病院)

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